――22 ページ34
.
私の内心が伝わったのか社長は「難しい事じゃないよ」と付け足す。
「いや、難しいと思いますけど、俺的には」
「余計なこと言わなくていいよ」
横から二宮さんが挿んだ言葉に私は社長を見る。
社長は視線を彷徨わせると、最後に困ったように頬をかいた。
「いや、あの……ちょっと難しいかもしれないけど」
そう前置きした社長の相談というのは。
「実は再来週仕事が出来ないのは婚約者の東金実莉の誕生日パーティーがあるからなんですけど」
「東金実莉さん……」
「社長の婚約者である東金運送のご令嬢です」
二宮さんが横から補足してくれる。
「婚約してから二度目の誕生日なんです。さすがにプレゼントもしないのは悪いかなと思って」
社長は苦笑いをしている。
進んでプレゼントを渡したいというよりは、リスクマネジメントとして渡しておきたい、という感じに聞こえた。
「もうしばらくすると婚約して二年の記念日もありますから、ちゃんと考えて渡した方がいいですよ」
「わかってるよ。だから困ってるんだろ」
二宮さんがチクリと言った言葉に社長が面倒そうにため息を吐いた。
婚約して二年経つご令嬢、か……。
思ったより長くお付き合い……と呼ぶのかわからないけど、婚約してから時間が立っているらしい。
まだ結婚しないのかな？
そう思ったのが顔に出てたのか、社長が眉根を寄せてしまった。
「政略結婚ですから、別にしたいわけじゃないんですよ俺も」
「ですが、北欧ルートの開通には必要なことですよ」
「わかってるよ」
社長は二宮さんに返事をしながらまたため息を吐いた。
政略結婚なんて日常には聞かない言葉が聞こえてきて私は驚く。
私が思っているよりも櫻井カンパニーとは大きなものなのだろう。
「実莉様も誕生日くらいは構ってもらえると思っているんじゃないですか」
「どうだろうな。俺に構ってもらいたいなんて思ってるかどうかなんとも。とっくに愛想付かされてるし」
「そうなんですか？」
思わず口を挿む。
社長は肩をすくめた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 393人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
iCHiKA(プロフ) - のりさん» のり様、お久しぶりです！お待たせしてました、久々の今回は「キスしたいだけ」でございます。こちらこそ今回もありがとうございます。そう言っていただけてとても嬉しいです。お楽しみいただければ良いのですが。今回もぜひ最後までよろしくお願いしますね！ (2021年9月8日 21時) (
レス) id: ca4476f6fd (このIDを非表示/違反報告)
のり(プロフ) - キタ。今回はキスをしたいだけのお話なんですね。しかも思いがけず長編連載。ありがとうございますm(__)m 既に続きが楽しみすぎです。あ、こんにちは。お疲れ様です。余談ですが私にも亜由ちゃん同様カワイ子ちゃん(3人)がいますw (2021年9月8日 16時) (レス) id: 18c83a81d5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：iCHiKA
| 作成日時：2021年9月4日 16時
