紅の花【文豪ストレイドッグス】

第五話　嫌い ページ8

なんでいるの、なんで気づかなかったの


嫌いなのに



やっぱり、さっきの勘は正しかったみたいだ。



ああいやだ

吐き気がする





嫌いだ



昔と少し違う身長も

前と少し変わったこの笑い方も

以前から変わらないこの髪型も



全部



嫌いだ




「やだなぁ、何か返事をしておくれよ。」



この声も


私に向けられた視線も



「離して。」


「残念だけど、それは無理だね。」


「嫌いなの、触られたくない。それに、探さなくちゃいけないの。離して。」


そうだ、久作を探さなくてはいけないんだ。

こんなところで捕まってるわけにもいかない


それに、触られたくない。



気持ち悪い。やめてほしい。



かといって、異能も使えない。



「とりあえず、探偵社に来てもらおうかな。」


いやだ


それは嫌だ


「いやだ」


「だーめ、行こうか。君は危険だから、探偵社で預からせてもらうよ。」


何が


何が危険だというの？



私の異能力？


欲しくてもらったわけでもないのに。



望んでもらったわけでもないのに。



生きるために、利用しただけなのに。



なのに、みんな私のことも久作のことも



危険だって、怖いって、



とおざけて、きらって


けっきょく、何も変わっていないんだ。



こんな世の中、ずっと変わんないんだって。



もういやだ、嫌いだ


こんな世界は。



生きているのさえ疲れてしまう。



ただ、楽しんで、少しでも平和に生きたかった

幸せになりたかった。



おかしいね、今の日本は基本的人権の尊重なんて無視するのね。


平和に生きる権利も、幸せになる権利も



持たせてくれないのね。



嫌いだ、いやだ。



もう、ずっと、




朝なんて、こなければいいのに。









そして、私は意識を失った。


そこまでで、記憶が途絶えていたから。


その次に瞳を開けたときは、




私には似合わない



真っ白な世界がまっているのだけど。

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