【gnsn】僕を探してほしいのですが！ (ページ38)

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忘れないでいてほしかったページ38

鍾離side

今でも昨日の事のように思い出せる、あの魔神戦争での日々。

「”饕餮様”！」

と、人は彼を呼んだ。

お前はその名をあまりいいようには思っていなかったみたいだが。

全てを無に帰してしまう程の力を体から引っ張り出して石に変える、その代わりに求めた代償。
＿＿＿戦争中、ずっと共にいること。

この代償はあまりに不釣り合いだ。お前にメリットが無い。

それでも求めたのは...どうしてもお前が＿＿＿＿。

『すみません。僕だけここに残ってしまって』

と、聞きなれた声に物思いに耽った脳みそはリセットさせられた。
敬語を使われることにとてつもない違和感がし、どこか気持ち悪さが胸の中に残る。

「謝ることはないだろう。俺としてはここにいてもらった方がいい」

『は、はい...』

あの二人は、どうやら静芳の付き人として共に旅をしていると聞いた。
折角璃月に行くのだからと、任務もついでに引き受けていたらしい。それで今は往生堂を出ていき、残っているのは静芳だけと言うことだ。

『そうだ、さっき言っていた＿＿もしかして耳飾りってこれの事でしょうか』

そう言って外套の内側を探り、山吹色の耳飾りを取り出した。
それは確かに、あの日の自分が送ったもので間違いないようだった。

「＿＿＿持っていてくれていたのか」

『売ってしまおうかって思ったこともあったけど、見れば見るほど手放したくないと言うか。大事な物のような気がしていたんです。僕の数少ない持ち物ですから、なにかわけがあるなって』

『質屋が無かったってのも大きいですけど』

猫を撫でる時のような優しい手つきで耳飾りに触れていた。
昔からこういう所は変わっておらず、少し女々しく見えるところがとてもそそられる。

『お手数ですが、付けて頂いてもいいでしょうか。自分ではうまくできなくて...』

「いいぞ、それを貸してみろ」

と、耳飾りを受け取る。

「すまないが、髪をどかしてくれるか？」

『はい』

髪を耳にかけ、これで大丈夫ですか？と、問いかける。
恐らく無意識でやっているのだと思うが、だとしたらあまりにも人たらしすぎるな。

「...よし、できたぞ。違和感はないか？」

『ええ、全然大丈夫です』

そう言って耳飾りの毛の部分を触っている。気に入ってそうで何よりだ。

ただ、そういう姿を見る度。記憶を無くしていることが本当に惜しいと、胸を締め付けられる思いだった。