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「ん…」
「気がついた?もう1週間も眠ってたんだよ?」
目覚めれば神威のアホ毛がひょこりと見えた。しょんぼりと下がっていたアホ毛が少しだけ復活したように見えた。
ふっ、と笑ってしまうと神威は「なに笑ってるの、殺しちゃうぞ。」と冗談を投げかけた。相変わらず人並みに心配する気持ちはないようだが、神威なりには心配してくれていたらしい。
「あ、ぶとは…?」
「……無事だよ。ただ、なにも喋ってくれないから懲罰室にいるけど。」
「懲罰室⁉」と起き上がろうとした自分の右腕に力が入らなくて思わず倒れてしまった。みてみれば右肩は大穴が開いているのが包帯の上からでも分かる。
「ああ…。」
思い出した。そうだ、ダメだ。阿伏兎を懲罰室から出してもらわなければ。
「神威…阿伏兎は私を守ろうとしてくれていただけなの。喋らないのも私のことを気にかけてだと思う。懲罰室なんかに入れないで。」
「…本当に一体なにがあったんだい?」
切なそうな顔の神威は初めてみたから少し戸惑ってしまう。だけれども、私も多分同じくらい切ない顔をしていると思う。
「それは言えないの…。」と一言告げると神威はまたアホ毛をしょんぼりと下げてしまった。同様に眉間のシワも少し深くなった。
神威は私の右頬に手を伸ばした。触れるか触れないか、というところでさっと手を引いた。一体どうしたというのだろうか。
「神威…?」
「…しっかり休んどいで。」
アホ毛を下げたまま神威はドアの方へ向かっていきそのまま出て行ってしまう。
あの伸ばした右手が私の頬に触れなかったのが何だか少しさみしい。
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作者名:咲 | 作成日時:2019年6月16日 2時