【銀魂】会者定離【短編集】 (ページ6)

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あたり【神威】ページ6

「あ、また当たった。」
「えー！また⁉神威絶対ズルしてるでしょ！」

「もう三回目よ⁉」とまだ一本目のアイスを少々溶かしながらゆっくりと食べているAに笑ってあたりの棒を交換しに行く。

カウンターでうつらうつらしていたおばちゃんも「また当たったのかい。」とニコニコして俺のあたりを受け取った。

今日はついてる。

いつも小言でうるさい阿伏兎も用があっていないし、いつも病弱なAも元気にベンチに座ることができている。

なんだか怖いくらいだ。

あたりでもらったアイスを開けながらベンチへ戻ればさすがにもう食べ終えたのか足をブラブラしながらAは俺をまっていた。

こんなに暑いから、と番傘を持っていないAに被せた麦わら帽子が似合っている。

「また当たったら神威、インチキ疑われちゃうよ。」
「あのおばーさんならそんなことないよ。」

「それに疑ってるのはAだろ？」といえば俺を真っ直ぐに見つめて「そのとーり。」と笑った。

その笑顔に冷たいかじりたてのアイスをピトリとつければ「冷たいっ！」と飛び跳ねた。ポタリとこぼれ落ちたソーダ色のそれがなぜか切なかった。

胸がぎゅっと苦しめられる。もうすぐでアイスがなくなってしまう。またあたりが出れば、この時間は続くのに。

「あ…」
「またあたり⁉すごい神威！」

また嬉しそうにするAに俺はもっと苦しくなった。2人の時間が長く続けば続くほどこの時間がおしい、もっと続いて欲しいと思ってしまう。

「あたり…変えないの？」

先ほどまであたりが出ればすぐに変えに行っていた俺を不審に思ったのかAはそう尋ねた。「行ってくる。」と無理やりな笑顔を貼り付けて、またおばちゃんの元へ向かう。

「あらあら…そんな顔、しないの…。」

おばちゃんは優しく頭を撫でながら少し悲しそうに微笑んで俺にアイスクリームを渡した。

とぼとぼと歩く俺とは対称的にAは俺を見つけると嬉しそうにベンチから飛び跳ねる。

「また、当たるかなー？」

当たれ、と思いながらアイスの包装をピリッと破ったら、ソーダの匂いが鼻にツンときてなんだか泣きそうだった。