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103.意馬心猿 ページ7

ぼうっ、とした顔でパトカーに乗っていれば、キキッ、と雑に止められたブレーキで慣性の法則にしたがい、私の体は前のめりに。そのままヘッドレストへ頭をぶつけ、「いてっ。」と声を漏らした。

「すいやせんねぇ、どっかの誰かさんがぼうっとしてて仕事になってないみたいだったので制裁を、と思いやして。」
「…すみません。」

ばれていたのか、とルームミラーに視線を移せばこちらを見ていた沖田隊長君と目が合って。はは…と苦笑いすればため息をつかれてしまった。

「姐さん、しんきくせぇ顔をすんのもいいですがね、こちとらそれでなくとも2人きりなんて気まずい空間なんですから仕事はしっかりしてもらわねぇと。」
「ご、ごめんってば。」
「おおよそ万事屋の旦那となにかひと悶着あったってところでしょう?」
「…ち、ちがうし…。」

「目、泳いでやすぜ。」とフンっ、と鼻で笑った沖田隊長君はそれ以上は何も言わなかった。こんな日に限って桂さんも出てこないし、平和なパトロール。何かあってくれた方がこちらもいろいろ考えなくて済むというのに。

「…沖田隊長君はさ、なんで真選組に入ろうと思ったの?」
「特に理由はありやせんよ。俺ぁ近藤さんがやるっていうことについていってるだけですぜ。しいていゆうなら成り行きじゃないですかねぃ。」

成り行きで警察官、しかも一番隊隊長になれるくらいなら私だってあのゴリラについていきたい。口では沖田隊長君はそういうけれど、彼の努力があってこそのことなのだろう。だからしいて言うなら必然。

それに比べて私は。大手とは言えどもただのしがない女記者。特に大ネタを上げたこともないし、目立って何か企画しているわけでもない。そんな私に…

ふいに銀さんのあの夜の顔と、異様でない雰囲気が思い出されて「ああっ!」と声を上げた。さすがにこの様子の私には少しばかり驚いたのか沖田隊長君のハンドル操作が少し乱れた。「びびった。」と小さくつぶやいた声が聞こえた。

「ごめん…ほんとに。」
「そう思うんだったらさっさと旦那と仲直りしてくだせぇよ。俺たちも姐さん守りながら仕事するっつーのは結構負担なんですぜ。」
「いつもさぼってるくせに。」

このカメラに全部おさめられてるんだから…とカメラを彼の視線に入るように持ち上げれば、そんなのいつでも壊せる、というように車のスピードを上げられた。

はあ、とため息をついた私の横には確かに誰も座っていなかった。

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設定タグ:銀魂 , 坂田銀時 , 恋愛   
作品ジャンル:恋愛
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narumi(プロフ) - いつと楽しく読ませてもらっています(*^^*)とても続きが気になります♪応援しています! (2021年2月15日 20時) (レス) id: 5cd2b1b9c5 (このIDを非表示/違反報告)
conny(プロフ) - 続き気になる!楽しみにしてます! (2021年2月3日 15時) (レス) id: 9be2d294c2 (このIDを非表示/違反報告)
気空(プロフ) - とても素敵なお話でシリーズ一気読みしてしまいました……! 夢主と銀さんの絶妙な距離感の変化がたまらんです。こういう夢主ちゃんあまり見かけないので巡り会えて嬉しい……陰ながら応援しております! (2021年2月3日 7時) (レス) id: 413d1f6892 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2021年2月1日 20時

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