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彼女がきてから約3ヶ月は経っただろうか。「A。」と言えば短く「何?」と振り返る彼女。
第七師団では同じ同族だからだろうか。なかなかうまくやれているようだった。同族嫌悪って言葉もあるけど、そんなの俺の辞書にはないよ、なんて言えるほどだった。
長い髪を揺らして歩く彼女はまだあの古ぼけた小さな部屋にいた。どうやら気に入ったらしい。あれから一度も文句もなければ、何かを追加して買って欲しい、などというお願いもなかった。
「貧乏くさい。」と俺が言えば必ず笑って「それでいいの。」と言った。相変わらずの減らず口だけど、俺はそいつのさばさばした性格は好きだった。
「…アホが?そんなの嘘でしょ?」
だから、そいつが誰かと携帯で喋っていた時の焦り口は冗談かと思ったんだ。きっと携帯先の誰かが阿呆提督の馬鹿さ加減を愚痴っていて、それに呆れていた…みたいな。
それに俺が「どうしたの?」と声をかけるとAは何事もなかったみたいに、笑って「何にもないよ。」というから。何にもないわけなかったのに。
その時、彼女は言ったんだ。俺がじっとAを見つめるから。
「この髪、いいでしょ?親からの唯一の形見なんだ。形見っていうのも変かもしれないけど、本当にこれだけ残して行ったの、あいつら。神威の髪は綺麗な朱色よね…。誰似?」
「…母さんだよ。」
無理に話をそらそうとしていることも本当は分かっていたのかも知れないけど、俺がそれ以上深く尋ねることはなかった。
今まで、選択肢を間違えてきたことはなかった気がしていた。親を手にかけようとしたことも、妹と病気の母を置いて行ったことも、春雨に入ったことも。後悔もなかった。
だからなのかも知れない。あの時妙な不安に駆られた自分に俺はそんなことない、と言い聞かせていた。それで安心してしまったから。自分の選択肢に、自信に間違いはないと。
俺はもっと自分を疑うべきだったと今更後悔しても遅いのに。
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咲(プロフ) - 雪華さん» 是非、私の勝手な都合で書いている短編集を読んでいただけると幸いです。 (2019年6月2日 13時) (レス) id: 97c0d12c03 (このIDを非表示/違反報告)
咲(プロフ) - 雪華さん» おそくなり、すみません。私は自分の好きなようにお話を書いておりまして、お願いされる形で書くのは正直読んでくださっている読者様方をがっかりさせそうで自信がありません。ですのでそう言ったお願いはできかねます。申し訳ありません。 (2019年6月2日 13時) (レス) id: 97c0d12c03 (このIDを非表示/違反報告)
雪華 - お願いあるんだけど良いですかな?ドラゴンボールのキャラ×18歳のメイ・チャンの恋愛短編集を作って貰いますかな?メイ・チャンは悟空達の仲間で子パンダのシャオメイと一緒で長男のグリードと次男のエンヴィーの妹を設定で (2019年1月15日 20時) (レス) id: 1286db9797 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:咲 | 作成日時:2017年9月17日 0時