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「おい、A…」
一瞬どきりとしてしまった。短い橋で凍った川を見るそいつの横顔はいつもの馬鹿面とは全く違って見えた。ーいや、全く違うのだ。
俺が声をかけたのにも気付かず、Aは俺をの方を見向きもしない。
「A…?」
側に行ってそう呟くと相変わらず俺の方は全く見ずに「不思議だね。」と声を落とした。俺からすればお前が十分不思議なんだが。
「暖かいものは、冷たさに負けるのね。」
悲しそうにそれでいて起こっているようにも見えた。目を伏せたそいつのまつげにいそいそと降ってきた雪が積もる。
キラキラと積った雪は少しとけ、まつげから流れる。それが涙のようにも見えた。
「…どういう意味?」
「神威も、いつか…ううん、なんでもない。暖かい息って、冷たさですぐ白くなるね!ってこと!」
にひひ、といつもの馬鹿面に戻ったそいつは、「さあ!戦艦に戻ろう!阿伏兎が待ってるよ!」と駆け出した。その言葉も白く空に消えて行く。
俺は何となくAの言いたいことが分かった気がした。
出生も親もわからないそいつを最初に引き取ったのかが誰なのかさえ、分からない。ただ、たらい回しにされてきたそいつを結局引き取ったのは俺たち第七師団だった。
頭の弱いそいつは最初は煙たがれていたが、今では団員たちと持ち前の明るさで仲良くなれているようであった。
ーだけど、幼心に付けられた傷はそうそう消えるものではないのだろう。
「本当は、俺もいつか…いなくなるって言いたかったんだろ…。」
「そんなこと、ないのに…。」と漏らした暖かい本音もそいつに聞こえることはなく、白くなっていく。
本当にこんな雪の日、忘れてしまいたい。
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咲(プロフ) - 雪華さん» 是非、私の勝手な都合で書いている短編集を読んでいただけると幸いです。 (2019年6月2日 13時) (レス) id: 97c0d12c03 (このIDを非表示/違反報告)
咲(プロフ) - 雪華さん» おそくなり、すみません。私は自分の好きなようにお話を書いておりまして、お願いされる形で書くのは正直読んでくださっている読者様方をがっかりさせそうで自信がありません。ですのでそう言ったお願いはできかねます。申し訳ありません。 (2019年6月2日 13時) (レス) id: 97c0d12c03 (このIDを非表示/違反報告)
雪華 - お願いあるんだけど良いですかな?ドラゴンボールのキャラ×18歳のメイ・チャンの恋愛短編集を作って貰いますかな?メイ・チャンは悟空達の仲間で子パンダのシャオメイと一緒で長男のグリードと次男のエンヴィーの妹を設定で (2019年1月15日 20時) (レス) id: 1286db9797 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:咲 | 作成日時:2017年9月17日 0時