【銀魂】一樹之陰【短編集】 (ページ48)

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「…どうして神威、今日は笑わないの？」

神威の質問には答えず、私は神威にそう尋ねた。

神「質問してるのは俺だよ。」

「どうして、笑ってないの。」

〝もう、死んでもいいや〟

私の中でそんな声が聞こえた気がした。違う。気がするんじゃない、私の正直な気持ちなのだろう。

目の前の真面目顔つきが笑顔に変わった瞬間が私が死ぬ時だと覚悟している。

担がれていた阿伏兎は途中で意識を失ったのか神威の横でだらんとしている。まあ、あれだけの手負いを受けていたのだから仕方がないだろう。

私は密かに神威が笑うのを待っていた。早く笑って欲しかった。そうすればこんな恐怖から逃れられて、楽になれる。

「どうして、笑わないの。」

神威の質問に答えず、私はそう問い続けた。足を止めた神威を私はまっすぐに見た。そう、青い目をまっすぐに見つめた。

「ねえ、どうして！？早く笑ってよ！そしたら私は…」

ーこんな思い、もうしなくて済むのに…ー

好きな人の笑顔が、死の宣告で。

好きな人の笑顔なのにそんな風に思うことしかできなくて。

好きな人なのに化け物にしか見えなくて。

好きな人の言葉でさえ、信じられなくて。

好きな人なのに…

まっすぐ神威を見つめながら流れ落ちた涙。神威は表情一つ変えず阿伏兎を横たわらせ、私に近づいた。

ああ、これで私ももう、終わり。

すっと目を閉じた。殺す前の神威の笑顔はもう見れない気がしたから。

お腹から迫り上がる血の味を私は待っていた。だけど、私が感じたのは、暖かいぬくもりで。

神「俺の女って言ったじゃん…。」

そう微かに耳に聞こえたのちに目を見開いた私には顔いっぱいに広がる神威で。唇のは生暖かいものが触れて。

そっと私から離れた神威は笑顔だった。