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飴玉【沖田総悟】1 ページ44

「泣かないで。」

そう言っても泣き止まない彼に私は1つだけ飴玉を渡した。黄色くて、砂糖でキラキラと輝いたレモン味の飴。

「ほら、これ食べて。大丈夫、総悟は私がいなくてもなんだってできるんだから。ミツバ姉だっているし。」

「だから、ほら、泣かないで。」と私が大きな赤い目にたまった涙を親指で拭いてあげればようやく彼はほんの少しだけ顔を上げた。

もともと目が赤いから泣きはらしたことなんて分からない。だけど、長い睫毛に引っかかった涙から泣いたことはすぐ見通せるのだろう。

沖 「俺が大きくなったら、必ず会いに行くからな!」

さっきの涙はどこに言ったのかというくらい顔を弾け上げて彼はそう叫んだ。ほんの少しだけ涙声なのがまだかわいい。

「うん、待ってるからね。」

そう笑って、私はようやく立ち上がり、彼に背中を向けた。会いに行く、なんて言われたけどきっとこれが最後だろう。だって私は今から死にに行くんだから。

「さよなら…。」

振り返りはせずにそう呟いた。振り返って仕舞えば溢れ出す涙を彼に見せてしまう。私よりも6つも年下の彼に。

恋愛対象なんてものには見れたことはないけど、ミツバ姉と同じくらい彼を大事にしていた。弟みたいだった。

止まらない涙をふかないまま、私は表で待っていた真っ黒な車に乗り込んだ。豪華で華やかな車なはずなのに、私には死神が迎えに来たようだった。

走り出した車のミラーからほんの少しだけ玄関から顔をのぞかせていた彼が見えた。

これ以上は見ていられないと目をそらした私はそらさなければよかったと一生後悔することになる。

この日、私は死んだ。

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作者名: | 作成日時:2017年1月16日 1時

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