時間【坂田銀時】１ ページ42
銀時side
「ワタシハ、サカタサンノコトガスキデス。」
銀 「なんだぁその棒読み、やり直し。」
「無理、もう無理です、恥ずかしくて死にそう...。」
消え入りそうな声で呟きながら顔を手で覆い隠したそいつの告白は予想していたものだった。何日も前から、少しお時間頂けますか、なんて連絡が来たかと思えば、挙動不審なそいつから俺は何となく察してしまって現在進行形でここにいた。しかし、好きな子からの告白というものは何とも胸がむず痒いものである。
銀 「どうする？」
俺は、イエスとも、ノーともいわず、少し意地悪な質問を投げかけた。そいつは少し怪訝そうな顔して、「どうする？」と質問を繰り返した。
銀 「江戸についてくる？」
「え、行きたい。行きたいけど...」
「まあ、無理ですけどね。」と少し悲しそうに笑ってそいつはつぶやいた。
もともと今年から江戸に行くことが決まっていた俺は、こいつのことが好きだったが置いていく身として、どうしても告白できない状況で、告白はしないことを決めていた。だがしかし、俺の意図をこれっぽちも読み取ってくれなかったこいつが告白してきたというわけである。
銀 「でも俺もお前のこと好きだぞ。」
「...それは、あれですよね、いわゆる、先輩として、後輩が好き的な...。」
銀 「いや、普通に好きだ。」
これだけは言っておかなくてはと、俺もマフラーに顔をうずめだしたそいつをまた見つめた。そいうえば今はまだ三月である。マフラーを巻くほどにはまだ夜は寒い。
ひゅうっとあれから会話が止まってしまった俺たちの間を風が通り過ぎた。
銀 「どうする...？」
もう一度、顔が半分しか見えていないそいつに俺は尋ねた。意図しなかったものの声は震えていたように感じた。
「付き合うか、付き合わないか？」
銀 「うん。」
核心をついてきたそいつに俺は返事だけ返した。だが、そいつから答えが返ってくるわけでもなかった。
銀 「俺は、遠距離はできねえと思う。お前を寂しくさせてしまうと思う。」
ほんの少し、格好つけたように聞こえただろうか。だが、正直なところ、これが俺の本音である。こいつに悲しい思いはさせたくない。
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作者名：咲 | 作成日時：2017年1月16日 1時
