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朝食を食べ終え、今日は非番であるからいつもとは違う隊服ではない私服に手を通した。
もちろん隊服はいつもと変わらず、その姿で目の前にかかっていた。
「…。」
非番の日は決まっていつも私は特別な用事がない限り部屋から出ることはなかった。だが、今日は珍しく外へ出た。
そういえば今日は7月8日である。
がやがやとうるさい商店街を一人、静かに歩いた。この人のにぎわいも、商店街の雰囲気も、なにもいつもとは変わらなかった。
銀 「あら、Aちゃんじゃねーの。」
いつもと変わらないだるそうな眠そうな声で私を振り向かせたのは万事屋の旦那だった。
顔を見ればこれまたいつもと変わらず死んだ魚のような目で私を見ていた。
銀 「今日は隊服じゃねーのか。非番だな。」
「…。」
万事屋の旦那は「そーかそーか。」といいながら、向こうの方で口喧嘩をしているらしいチャイナとメガネを呼んだ。
また二人もいつもと変わらず傘をさし、メガネにかけられていた。
この三人が揃うとまた、口喧嘩が始まる。これもいつもの光景である。
どうやらもう私は空気のようになってしまったみたいだったから、私は静かにそこから離れた。いつもとは違って声もかけずに。
「…。」
空も風もいつもとなに一つ変わらなかった。
賑わっていた商店街を抜けて、今度は対照的に一際静かな場所に足を運んだ。いつもとは違う道である。
菜の花の道を抜けて、少し坂を登れば、もう直ぐ目的地である。
「…。」
今日の私はなんだかおかしい。
屯所の天井の木目も土方さんも近藤さんもカレーも山崎さんも商店街も万事屋の人も空も風もみんなみんないつもと同じなのに、私だけ違った。
いつもと違った。
「…。」
目の前に立つお墓も前に来た時と変わらなかった。
「…お誕生日おめでとう、総悟。」
何もかもいつもと同じ中で、絶対的に私だけ違った今日は、確かに7月8日だった。
前に涙を流したのはいつだっただろうか。
1年前の今日だっただろうか。
多分きっとそうだろう。
今日涙を流しているのだから。
そして来年の今日私はまたここで涙を流すだろう。
いつもと違う私で。
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作者名：咲 | 作成日時：2017年1月16日 1時
