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「遅くなってすみません、…………………………えっと…。」
名前がもう思い出せない私に目の前にいる隊士の人は苦笑いしながら「いいよいいよ、Aちゃん。」と私の名前を呼んだ。
「すみません…。」
相手の人はちゃんと私の名前をわかっているのに。それに比べて自分は。
情けないったらありゃしないのだ。今すぐここから去ってしまいたいけれども目の前にいる彼にどう何を言ったらいいのかさえも分からない。
「名前を覚えてなくてすみません」?それとも「時間がかかってすみません」?謝ることはいっぱいだ。
沖 「A。」
私はうつむき、目の前にいる彼はどうしようとオロオロしているところに総悟が私に声をかけた。
沖 「わりぃーな、山崎。こいつどうも人の名前覚えんの苦手でよ。」
山 「いえいえそんな。」
ポンと頭を撫でながらヤマザキさんに私の代わりに謝ってくれた総悟。そっか、そっか。山崎さん。山崎。
「行くぞ。」と手を引かれた私は急いで山崎さんに会釈をして総悟の後に続いた。山崎さんも会釈を返してくれた。
沖 「そんな見ても何も出ねーぞ。」
「いやぁ、思えば総悟には色々助けてもらってるなぁって。」
皆総悟をドSドSというけれども私にはまあ、Sくらいにしか感じない。
確かに意地悪なところもあるけどそれよりも助けれくれたことの方がずっと多い気がする。
「見返りもないし。」
暖かいお茶をすすりながらそう呟く。なんだかんだ言ってこいつは優しいのだ。今回そう再確認した気がする。
沖 「…じゃあ」
見返りもない、と言った私にしばらく黙っていた総悟だったけれど、顔をあげれば真剣な顔をしてて。
沖 「見返りが欲しいと言ったらくれるのか?」
「まあ、高価なものは無理かもしれないけど…私があげれるものなら。」
「なんでも。」ときょとんとした顔でそう言った。
沖 「じゃあ、お前が好きだから、お前くれ。」
「は。」
びっくりしてそれしか言えなくて静止してる私に「返事は後でいいから。」なんて言って出て言ってしまった。
「は、え?」
1人で悶える私に奴のどす黒い笑う顔が思い浮かぶ気がする。
やっぱり優しくないと、明日になったら持ち前の記憶喪失を起こして全てを忘れていたらいいのにと赤い顔を冷やす。
「お前が好きだから」なんて言葉は忘れられるわけないと思いながらも。
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作者名:咲 | 作成日時:2017年1月16日 1時