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記憶【沖田総悟】1 ページ26

記憶というものは。

とても曖昧なもので、不確かだ。個々によって違ってきてたまに論争を起こすほど。

それは私にとっても例外ではない。

いや、私にとっては記憶というものがとても忌々しくもどかしい。



沖 「また忘れたのかぃ?」

「………ごめん。」

買い物カゴを持ちながら商品の前で立ち尽くす私に通りかかった総悟が声をかけた。どうやら全てはお見通しらしい。

沖 「土方さんからメモ紙はもらってねぇのか?いつももらってるだろぃ?」

「それがさ、今日頼まれたのは土方さんからじゃなくて…。」

「他の隊士の人。」と顔を歪ませて呟けば総悟はため息をついた。私が隊士の名前と顔が覚えられないのも日常茶飯事である。

沖 「何でいつまでたっても俺と土方さんと近藤さんしか覚えられねぇかねぃ。」

「3人は武州からの仲じゃん。あ、ほら、だから終兄とかは覚えてるじゃん。他の人は……ぼやっとだけど…。」

沖 「ダメじゃねーか。」

しゅんと沈んだ私にもはやできることは何もない。頼まれたものも思い出せないというかそれ以前に頼んだ人さえ思い出せない。顔も声も。

見かねた総悟が電話をしてくれているけれども電話相手の声を聞いても私には誰だかわからない。


もどかしい。


この気持ちを味わったのは決してこれが最初ではない。それどころかもういつもといっていいほどの慣れっこになってしまった。

だけれども心のモヤモヤが決して取れるわけではない。

沖 「封筒、切手4枚ずつ、最後に今日の夕飯の材料だってよ。」

「…誰からだった?」

沖 「山崎。」

山崎、山崎、山崎。何度も頭の中で名前をリピートしてみるけど浮かんでくる顔も声もない。

沖 「まあ山崎は地味だからな。分からねぇのも無理はないかもしれねぇな。」

落ち込んだ私にフォローするように総悟はそういったけど、気が晴れるわけでもない。私が忘れていることに変わりはないのだから。

「じゃあ、買いに行ってくる…。」

とぼとぼと総悟に背中を向けて歩き出したけど、今度はしっかりと右手にメモ用紙を握らされていた。

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作者名: | 作成日時:2017年1月16日 1時

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