8.万事屋銀ちゃん ページ10
はあはあと息を切らしながら走る中、やはり歌舞伎町と言うべきか、さすが歌舞伎町と言うべきか。いかがわしい店が並び、男女の組で溢れかえる。
Aは隊服であったためにこの街では余計に目立ってしまっていた。きょろきょろと周りを見渡すものの、トッシーこと土方、いや、今は土方ことトッシーだろうか。姿は全く見えない。
Aは万事屋にはあったことがなかったために、銀ちゃんと言う名前だけで、外見がどんな人であるかなどは全く知らなかった。
やらかした、一瞬そう思ってしまったけれども、目の前をすごいスピードで走り去るパトカーを見て、Aはそのパトカーを追いかけた。
確かに見えた、オタク姿の土方。Aは猛スピードのパトカーに追いつくはずもなかったが、その姿は見逃さないようにと走り続けた。
だからだろうか、好機が訪れた。いきなりパトカーが揺れ始め、逆走し始めたのだ。
Aはしっかりとパトカーを見据え、通り過ぎる瞬間、窓に手をかけた。中では何やら土方の胸ぐらを掴む銀髪の男が1人。
ーあれが銀ちゃん…ー
他にも天人らしき少女がハンドルを操作し、眼鏡をかけた少年がAを目を点にして見つめていた。
「あんた何してんすかぁ!!!」
いきなり新八がAの手を窓から外そうとする。それも当たり前だ。先ほどまで土方は真選組に追われており、そこから逃げて来たのだから。
だが、そんな事情を知らないAは先ほどよりもっと強い力で窓を掴み、新八から剥がされないように耐える。
「は、なし聞いて。私、副長のこと迎えに来たんだ。あと、万事屋銀ちゃんにお願いがあって。」
行方の胸ぐらを掴んだまま、銀時がAの目をまっすぐみた。新八の方はAを剥がそうとする力を弱めた。
「私と副長を、近藤局長の元まで連れていって。」
「お願いします。」と頭を下げたとは言えないが、首を縦にふったA。その瞬間窓の桟に頭を思い切りぶつけたA。新八は、敵ではないと判断したのか慌てて車の中にAを引っ張った。
「ありがとう。いきなりすみません、私、新しく真選組に配属された、葉月A。どうぞ以後、よろしく。」
「言ってる場合か!頭から血出てんぞ!」
よほど思い切り頭をぶつけたのかAの額からは血が流れていた。新八は手持ちのハンカチで傷口を塞いでくれる。可愛いハンカチだ。
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作者名:咲 | 作成日時:2017年5月15日 15時