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37.家族 ページ39

「ごめんなさいっ!お姉ちゃん!」

目の前で総悟がお姉さんの前で土下座する。状況が把握しきれなくて、頭がパンクしそうになる。Aはすこぶる勘が切れるし、戦術において頭はいいが、学は能無しだ。

まあ、これは学とは全く関係ないのだろうが。

総悟の今までの振る舞いを見てきた限り、こんなことをするような人ではないと思っていた。むしろこんな世界とは真逆をいっているのだと感じていた。

トンカチを真夜中に振り下ろす姿からも、獲物を狙う刀が一寸の迷いのない振りをするのも、土方のオタク姿をあんなゴミケラのように見つめていた目も今はない。

というか、逆にこっちが目を当てていられない。

ゴロゴロと猫のようにお姉さんに近づくと総悟は頭が撫でられるのが嬉しいみたいで頬を赤らめている。

だが、この状況を処理しきれなかったのはAだけじゃなかったらしい。

山崎も「えー!」と叫び声をあげ、他の隊士たちもいつもとは違う好奇の目で総悟を見ている。

「とりあえず総悟!今日は休みやっから、ミツバ殿に江戸をご案内してあげなさい!」
「いいんですかぃ⁉さ、姉上、そういうことなら早速行きましょう。」

あはは、あはは、とお花を飛び散らせて行ってしまった2人を呆然と見つめる。未だに机の上から動けなかったAに近藤は優しく頭を撫でた。

「あいつはなぁ、ミツバ殿が親代りなんだ。」

少し切なそうに、でも嬉しそうに近藤は言った。兄弟、家族というものがよく分からないAはそんなにいいことなのか、と少し羨ましかった。


ああ、でも。そういえば。


自分にも家族と呼べる人は1人だけいたかもしれない。だけれでも家族と呼んでいいのか分からなくて、結局一度も名前を呼ばなかった。

お父さんという名前を。

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作者名: | 作成日時:2017年5月15日 15時

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