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28.三十路の恋はめんどくさい ページ30

「おい、近藤さん、とっちゃんが来てるぜ。」
「え、なんで?」

Aが武州に向かってから二日目、真選組屯所の前には見慣れたリムジンが止まっていた。そこから顔を出すのはもちろん警察庁長官松平。

「おーい、松平のおじさんが来ましたよって...Aはどうしたぁ?」

煙草を吹かせながら松平はまるで自分のうちのように縁側を歩く。向かうはAのもとであったが、どうにも姿が見当たらない。Aは松平のことを娘に執着しているおっさんだと認識はしていたが、別に毛嫌いもしてはいなかった。むしろ松平の言うことは何でも聞くあたり、信頼はしているようだった。

そんなAは松平が来たことを知ったらいの一番に駆けつけるはずである。それなのにとんと姿が見当たらない。松平が少しの違和感を感じた時に近藤は現れた。最も顔色は青白く、冷や汗を大量にかきながら。

「と、とっちゃん...今日はどうしたんだ?
「んー?俺がこんなところに姿を現すことといったらAのことに決まってるだろぉ〜?ところで...Aの姿が見当たらないんだが、どこに行ってんだ?んー?」

がたがたと震え出した近藤の後ろには土方が。「そういや、昨日から姿が見えねぇな。」と。

「そういえば近藤さん、なんであんた今こんなとこにいるんだ。今日からじゃなかったか?新しい隊士の選抜。」
「い、いやぁ...それなんだがな...。」



「はぁ!?葉月に隊士の選抜に行かせたぁ!?」

土方の怒りの含んだ叫び声は屯所全体に大きく響きわたった。なんだなんだと隊士が部屋の前に集まる中、近藤は涙目になっていた。額には拳銃が向けられている。

「ちょっとおじさん...一発行きたいんだけどいいかな?」
「ちょっと待て、とっちゃん。近藤さんにも何かわけがあったと思うんだ。それだけでも聞いてやってくれよ。」

「うるせぇ!Aはな、Aはな...ひとりで電車なんて乗ったことなんだぞぉ!」と叫ぶ松平はとりあえず隊士に抑えてもらい、土方は一度落ち着かせるように煙草に火をつけた。「それで、なんで行かせた?」と詰問しようとした時には近藤はすでに泣いていた。

「だって!お妙さんが...今日は猫耳デーだから絶対来いよって...!」

お妙さん、土方にはその名前が悪魔にしか見えなかった。

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作者名: | 作成日時:2017年5月15日 15時

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