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23.ゴリラゴリラゴリラ ページ25

以前、そう、ずっと前。Aが松平に拾われるずっとずっと前。Aには今でも鮮明に思い出すことのできる大事な人がいた。

自分よりも、何もよりも大事だった。

その人はAに特別なにかを与えたわけではなかった。その人自身には金も人脈もなにもないに等しかった。

けれどAにとってはその人が全てだった。




「そんな顔…しないで。」

呟いたAはその人を思い出していた。ああ、なんと苦い思い出なのだろう。

隊士の流す涙が自分のせいのように思われてなんだか心臓が握りつぶされるように痛い。

Aは「ここは、任せる。」と一言残すと、おそらく100キロは出ていた車から飛び降り、逆方向へ走り出した。

そう、近藤の乗る電車の方へ。

こんなことならあの時電車から飛び降りなければよかったと後悔したが、今更そんなこと思っても遅いだけである。

全速力で走るけれども脳裏から隊士の涙がへばりついて邪魔をする。走ろう走ろうと動かす足が止まろうとする。

「くそっ…」

やっぱり、真選組に来たのは間違いだったかも知れない。ほんの小一時間前には真選組を知りたいなんて総悟に告げたくせにAはそんなことを考えている。

様々な思考が飛び交う中、見えてきた背中。もじゃもじゃの銀髪頭。銀時だ。ただ、その体からは細く光り輝く弦のようなものが見える。

弦は強く銀時を引き止めていた。Aは思わず足を止めた。銀時の手足から血が吹き出していたからだ。あのままでは手足がちぎれてしまう。

「銀ちゃん!」

Aは勢いよく駆け出した。弦を斬ろうと腰に構えた刀をギュッと握るーが、

「止まるな!俺のことはいい!お、前は真選組だろうが!早くゴリラ達の元へ!」

ゴリラ…?と一瞬固まってしまった。真選組にゴリラなんていただろうか。必死に考えても答えは出てこなさそうだった。

「近藤のことぉ!あいつの本名ゴリラだからぁ!」

銀時は一本一本弦を切っている。ピンッと弦が切れる音と同時にAの頭には稲妻が走っていた。と、同時に足も動き出す。

まさか、局長はゴリラだったなんて…とAがクソ真面目に考えていたことなど銀時は知らなかった。

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作者名: | 作成日時:2017年5月15日 15時

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