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21.変態 ページ23

血生臭い車両からAは総悟と一緒にでできた。ここなら少し息ができそう、とAは思った。そんなAの様子を察してか総悟は「ありがとよ。」と短くお礼を言うとトスンと地べたに座った。どうやら総悟が今から派手に動くのは厳しいらしい。

Aはちらりと総悟のけがの様子をうかがう。確かに右肩は深くさしこまれたようだが、それ以外に大きなけがはなく、出血も止まりかけているようだった。

「沖田隊長、あなたはここにいて。私は今から後ろで戦っている人たちの援助に行く。」
「いくっつったって、どうやって。ここは走る電車の上ですぜぃ?」

Aが表情一つ変えることはなかった。ただまっすぐ隊士たちがいる方を見つめている。Aが何を考えているのかなんて総悟に分かるはずはなかった。そもそもこんな短い間でわかるという方がおかしいが。

Aが真選組にきていったい今どれくらいだろうか、総悟はそんなことを考えていた。きっとまだ一週間とそこらへんだろう。それなのになぜAは臆することなく、表情にそれを出すこともなく、立っていられるのだろうか。

「へっ、とんだ変態野郎だ。まだよく知りもしない俺たちを助けに来るなんて。」
「...なにかおかしいのか?」
「おめぇさんにはまだ真選組の内情のことなんてとんとわからないだろうっていったんだ。」
「そう...だな、そのことは私にはまだよくわからない。」

ほんの少しだけ悲しそうな顔が垣間見えた気がしたのを総悟は見逃さなかった。そう、先ほど銀時が見たようなそれとおなじものであったであろう。だが、そんなこと総悟は知らない。

「だけど...知りたいとは思った。こんな私でも。」

その一言を残してひらりと走る電車から降りてしまったA。さすがに総悟も驚いて追い風が目に入る痛さを我慢して目を細めてAの姿をその目に映した。

小さな後ろ姿だった。しかししっかりと地面をけって走っていく。

「ほんとに...変態だぜぃ...。」

電車を飛び降りる際にAの首元から見えたそれは紫色に光っていた。

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作者名: | 作成日時:2017年5月15日 15時

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