20.嫌よ嫌よも好きのうち ページ22
スピーカーを下ろした土方は息切れをしている。本来の土方が戻って来たわけではなかったが、となりでハンドルを握る新八はなんとなくそれがオタクの土方の本心でもあるように見えた。
「近藤氏…君生きなきゃならない。君がいるから、真選組は終わらない。馬鹿なくせに難しいこと考えてんじゃねぇよ。」
土方の口調ががらりと変わった。先ほどとは打って変わって。
「てめぇはてめぇらしく生きてりゃいいんだ。俺たちは何者からもそいつを守る。」
土方は愛用のマヨネーズ型のジッポを取り出し、タバコに火をつけた。ふうっーとひとつ煙をはきだせば、「近藤さん。」
「あんたは真選組の魂だ。俺たちはそれを守る剣なんだよ。」
戻って来たのだ。あの妖刀に飲まれた紛れもなく鬼の副長と呼ばれた土方が。
「一度逃げた君に、何ができるというのだね?」
水を差すように声を荒げたのは伊藤だった。伊藤を乗せてバイクを走らせるのはギターを担いだ男。土方は車のフロントガラスを割った。神楽が声をあげびっくりするのにもかかわらず、立ち上がった。
力を入れ、妖刀を抜く。だが、なかなか抜けるものではなさそうだ。
「さっさと抜きやがれ。」
「黙りやがれぇ!てめぇに一言言っておく!
ありがとよぉ!!」
こんなこと、もうきっとないだろう。土方が銀時にお礼を言うなど。銀時は気恥ずかしさからか、それとも気持ち悪さか、ふっと笑みをこぼした。ようやく俺の喧嘩相手がかえってきた、これこそ土方十四郎だというようにでも。
さやからぬかれた妖刀はもう土方のものだった。ギラリと刃をひからせ、怪しく光るそれは妖刀とは思えぬほどの美しさであった。
「まじで嫌よ嫌よも好きのうち、なのかねぇ。ま、俺はあいつのこと嫌いだけど。断じて好きなんかじゃないから。」
「銀さんそれ、好きって言ってます。」
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作者名:咲 | 作成日時:2017年5月15日 15時