19.月に変わってお仕置きよ! ページ21
叫ぶ近藤に見えたのは万事屋だけではなかった。後部座席に乗る顔を俯かせている男。
「まさか…お前ら、トシを連れてきたのか?ありえなくね?お前らが…。」
「遺言でな、こいつの。妖刀に魂食われやがって、もう今じゃヘタレたオタクだ。もうもどってくることもあるめぇ。」
視線をキョロキョロさせながら不安そうな土方が近藤に見えた。たしかに、あの鬼の副長と呼ばれた土方十四郎はもうそこにはいない。
近藤はここ最近の土方の様子を思い出す。
「こんな状態で、トシがお前らに何を頼んだっていうんだ!」
近藤は忘れていたような気がする。土方の、鬼の副長としての姿を。
「…真選組を守ってくれってよ。まあ、面倒だからてめーでやれってここまで連れてきたしだいよ。後なぁ、なんか隊服きた女の子も俺んとこに来たぞ。」
「葉月って言ってたアルヨ。」という神楽の言葉にAまで巻き込んでしまったのかと近藤は俯いた。
いや、それよりもあんな状態にもかかわらず、真選組のことを考えて妖刀に取り込まれた土方のことに後悔が募る。
「依頼料はてめーにつけとくからな。」
「…振り込むよ、俺の貯金全部。だが、俺もお前らに依頼がある。これも遺言だと思ってくれていい。」
銀時はちらりと土方を横目で見る。まだ俯いて顔を上げないこいつに近藤の声は聞こえているのだろうか。
今すぐさっきみたいに怒鳴り散らしてやりたい。だが、それは銀時の仕事ではない。
近藤は「トシを連れて引き下がってくれ。」と。
「俺は伊藤は危ないというトシの助言も無視し、ちょっと失敗したトシを伊藤のいうがままに真選組から追い出した。全、車に伝えてくれ。近藤勲は戦死した。今すぐ戦線から離脱しろ、と…。」
その言葉を聞いてすぐさま内部スピーカーを手に取ったのは土方だった。
「あー、あー」と情けない声で出だしは始まった。もしかすると土方は限界だったのかもしれない。もう、元に戻ればしない鬼の副長とオタクとの間で。
オタクといえど土方は土方なのだ。今の土方が取るべき行動はたった1つなのだ。そう、
「我らが局長、近藤勲は無事、救出した。勝機は我らの手にあり!局長の顔に泥を塗り、受けた恩を仇で返す不逞の輩。あえて言おう!カスであると!
今こそ奴らを月に変わってお仕置きするのだ!」
「おい誰だ!気の抜けた演説してるのは!」
「俺が誰だと…?真選組副長!土方十四郎なりー!」
真選組の土方十四郎としての意地を通すのだ。
131人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:咲 | 作成日時:2017年5月15日 15時