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14.二人の関係 ページ16

勢いよくドアを開けるけれどもAの前には誰もいなかった。どうやら皆前の車両に移動しているらしい。

空っぽになった車両の中をAはゆっくり前に進んだ。もしかしたら隠れて待ち伏せしている隊士もいるかもしれない。

Aは初めからここにはいなかったものの、何が起こっているかはなんとなく理解ができた。伊藤が言っていた内部の二分分裂が起こっているのだろう。

つまり、土方派か、伊藤派か。

正直まだAはどちらにつくにしても真選組に身を置いた期間が短すぎる。それ故に自分の意志ではどちらにつこうという考えがない。ただ、松平の言葉を信じるだけなのだ。

近藤について行け、というあの言葉を。

そうなると必然的にAは土方派の方につくのだろうが、そんなことはどうでも良い。今は近藤を救うことしか考えていない。

伊藤の話ぶり的に総悟以外の土方派は皆、頓所に残っている口ぶりだった。大方、近藤を殺りやすいように伊藤が仕向けたのだろう。もちろん、土方が解雇されたのも伊藤が噛んでいたのもAはもう理解していた。

「そうなると…」

なんとなく呟いてしまっていたが、Aには総悟の立ち位置がよく分からなかった。近藤をまもらんとすることは間違いない。それならば、土方を解雇する理由が分からない。

しかし、総悟は伊藤とともに土方を解雇に追いやった。総悟は前から土方を亡き者にしようとしていたが、本気でやっているように見えなかったAにはまだ、あの二人の関係がよく分かっていなかった。

見えないもので繋がれている、なんてロマンチックなことも浮かぶわけがない。Aは頭は切れるが、その代わりに恐ろしく固いのだ。

一つ前の車両に続くドアに手をかけた。ゆっくり開ければ目の前には見たことのある伊藤の姿。不気味に笑う姿はAに嫌なものを思い出させた。

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作者名: | 作成日時:2017年5月15日 15時

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