12.親バカも大概にしろ ページ14
「副長、見えたよ。あれだ。」
真っ暗な中、夜目が効くのかAは少し遠くの方を見つめて、そう呟いた。相変わらず土方の方はトッシーのままなのだが、ここまできてしまっては腹をくくるしかない。
「すげぇな。あんな遠くのが見えんだな。」
「…？普通じゃないのか？あれくらい。」
「普通じゃないアル、私全然見えないヨ。」
神楽が目を細め、じっと見つめても、汽車の姿は見えない。Aはよほど目がいいらしい。銀時も神楽も褒めたつもりでAにそう言ったのだろうが、Aは本当少し、神楽が普通じゃないと言った時、悲しげな顔をした。
もちろん、銀時はそれを見逃さなかったが、どこまで踏み込んでいいのか、まだ出会ったばかりだし、踏み込むべきではないだろうか、など考えを巡らせ、結局何もいわなかった。
「Aちゃんはよぉ、なんで真選組に来たんだ？」
だが、銀時はほんの少し、Aに探りを入れた。今現在、Aを信用できないところもなければ、信用できるところもない。
「…？松平警察長官に真選組に行けと言われたからだ。」
不思議そうな顔をして、銀時の質問に答えたA。Aの表情から、嘘はついていないことがわかる。
「警察長官か…。」
「あれアルカ、なんかめっちゃ白髪のおっさんアルカ？」
「あながち、間違ってはいないが、白髪のおっさんではない。娘に執着して、おそらく娘に嫌われている白髪のおっさんだ。」
「ひどい言い様だよ、この人。全然敬われてないよ、警察長官。」
いつも娘の話しかしないんだ、と呟き、うんざりした顔をしたAに新八は少し笑った。Aは意外と表情でものを語るやつらしい。
銀時はふっと笑うと、アクセルを思い切り踏んだ。車体が揺れ、新八が椅子に突っ込む。
「いきなりなんなんですか！銀さん！」
「見えて来たぜ、ぱっつあん！！」
銀時の見つめる先には紛れもなく近藤を乗せて走る汽車。だが、一番先の車両のみ、離れて走っている。
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作者名：咲 | 作成日時：2017年5月15日 15時
