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11.手に入らないもの ページ13

「その人から手を離せって言ってんだ!」

沖田が齢18歳とは言えない顔つきで鋭く赤い目を伊藤に向けた。しかし伊藤は動揺することもなかった。ただ、静かに笑った。

と、いきなり車体が大きく揺れ、電気が消え、暗くなった。その隙に、総悟は近藤の手を取り、伊藤たちがいる車両から出た。そのまま前の車両へと移動する。

「俺はトシになんて言えばいいんだ。」

頭を抱えながら、近藤は弱気な声を出した。しかし総悟はため息を交えながら、いつものことだというような口ぶりで、近藤を1番前の車両に押し込んだ。

「近藤さん、あんたの悪りぃところは人の悪いところを見ようとしないところでぃ。そんなんだから大きな爆弾さえも自分の手元に置いとく。だけどなぁ、そんなあんただから俺たちゃ、あんたについて来たのさ。」

総悟はふっと笑うと1つ後ろの車両に乗り移り、前の車両との連結部分を外した。少しでも時間稼ぎしようというわけだった。

閉じ込められた近藤は涙を流しながら総悟に行かないでくれと叫んだ。しかし、いくら大きな声をあげても総悟には聞こえない。たとえ聞こえたとしても総悟は戻ることはなかっただろう。

情けなく、泣くことしかできない近藤。その近藤が見た総悟の背中はまだ18歳の少年とも言える背中だった。

たとえどんなに身長が高くなり、外見が大人になろうとも心が大人になろうとも、近藤にとって、総悟は昔と変わらない総悟だった。総悟が歳をとれば当たり前に自分も1つ歳をとる。

だから近藤が総悟を大人としてみることはいつだってないのだ。可愛い部下であり、ミツバの弟なのだ。

きっと総悟もそれは感じているのだろう。自分が近藤の隣に立ちたいと願ってもいつだって、ずっと隣にいるのは自分ではないのだ。

あの憎たらしい前髪V字のニコチン野郎なのだ。それを歯がゆく思いながらも総悟はいつの間にかあいつを認めてしまっている。

そして、今もあいつが来るのを待っているのだ。あの瞳孔かっぴらいた目をみるのを。

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作者名: | 作成日時:2017年5月15日 15時

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