46.忘れ物 ページ48
にこりと笑ってはいるけれどもどことなく殺気を放っている神威に総悟はゆっくりとAの頬から手を離すと2人から距離を取る。
ぐい、とAを引き寄せ、自分の胸にぽすりと収めてしまったのを見て総悟はふっと笑った。
「王子様の登場ってわけかぃ?」
「あながち間違ってはいないよ。でも強いて言うなら魔王様かな。」
「全然ちげぇじゃねぇか。」と呟いた総悟はふうっと一つため息をつくとゴソゴソと何か探り始めた。
どこから出したのかニュッと出てきたそれはよく見覚えのあるものだった。
「ほれ、これ。忘れていったろぃ。」
ポイッと投げてきたそれを神威が受け取る。「ほら。」と見せてくれたそれは確かに3ヶ月前地球へ忘れてきてしまった番傘だった。
「なんで…」
「生憎靴は捨てられたけどな。そいつは土方さんが捨てようとしてたところもらってきたんでぃ。」
「傘の柄のとこに名前が入ってたから大事なもんかと思ってよ。」とそれだけ言うとくるりと総悟は背中を向けた。「捕まえないの?」と聞けば「んな顔色の悪りぃやつが地球に何か悪さしてきたとも思えねぇ。」とのこと。
「ただ、次会ったらもう容赦しねぇぜ。覚えときな赤髪の兄ちゃん。
地球のおまわりなめんな。」
それだけ残すと本当に走っていってしまった総悟。その後ろ姿をぼうっと見つめていると神威が「おー、怖い怖い。」と笑った。
「どこにいたの?てっきりあそこで待っていると思ったら…こんな顔して、しかもあんな奴に触られてるし…」
沖田さんはそんな人じゃないと言おうとしてやめた。別に彼のことはなんとも思ってないのに庇うのもおかしいと思った。けれども助けてくれたのはかわりなかったから。
「助けてくれたよ…」
「……ふうん…」
少し面白くなさそうな顔をしたけれどすぐに笑顔に戻ると「帰ろうか!」と私の腕を引いた。今度は置いていく気もなさそうで合わせてゆっくり歩いてくれた。
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作者名:咲 | 作成日時:2017年5月16日 0時