42.赤い瞳の少女 ページ44
なにもやることがなくなってしまった銀時だったが、坂本から一緒に宇宙に行かないか、と誘われた時でさえ、丁重にお断りを入れた。
ここ、地球で自分にできることを探そうと思ったからだ。
そうしてかつての仲間が全て銀時の元からさった後、焼け野原となったそこを歩いていれば、1人の少女が藍色の傘をさしてふらふらと前を歩いていた。
こんなところに1人、なにをしているのだろう、とすごく不審に思ったことを覚えている。親の亡骸でも探しているのだろうか、と少し気の毒に思いながらゆっくり彼女の後ろを歩いていると、そこにあった一本だけ残っている木の下に彼女は座った。
近づくにつれてぜぃぜぃと苦しそうな少女はまだ今の神楽と同じくらいの年頃だったと思う。
酷く苦しそうでしかも怯えいる様だった彼女のそばに座るとぴくり、と肩を震わせた。
「大丈夫か?」
そう優しく聞くと彼女は眉間にシワを寄せて目にいっぱい涙を溜めた。そうしてポロポロと泣き出してしまった。
銀時は持っていた水を差し出して彼女に飲ませる。余程喉が乾いていたのか一生懸命飲もうと口一杯に含んだけれども肺に入ったのか、けほけほと咳き込む。
「落ち着けって。」
トントンと背中をさすりながら彼女が落ち着くのを待った。相変わらず涙は止まらないみたいだったけれど、咳が収まると彼女は俺の目をじっと見つめて、「ありがとう…」とか細く言った。
燃えるような真っ赤な瞳だった。銀時は吸い込まれる様にその瞳を凝視した。
「ー!」
焼け野原の中、誰かが彼女の名前を呼んだ。遠くてなんで行ったかは聞き取れなかったが、彼女はびくりとその声に反応し、ブルブルとまた手が震えだしたけれども、立ち上がって彼の元へ行こうとする。
俺はその手を取って首を振ったけれども、彼女もまた、俺に首を振った。
「大丈夫…ありがとう…。」
そういうと彼女は一生懸命走ってその男の元へ行ってしまった。
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作者名:咲 | 作成日時:2017年5月16日 0時