37.プレゼント ページ39
「神威、入ってもいい?」
副団長室を後にしてもう少し遠く離れた場所にある神威の部屋の団長室の扉を叩けば、「いいよ〜」と割と元気な声が帰ってきた。
少し気持ち悪さを感じながら扉を空けてみれば、相変わらずニコニコ笑いながら腕立てをしている。
「神威、靴と番傘が届いたんだけど。」
「おっ、やっと?今回は宇宙グルグル回ってたから時間かかったなぁ。」
「で、それがどうしたの?」とシュタッと立ち上がり、そこらへんにかけてあったタオルをとって汗を拭く。Aは机に置いてあった水をとって神威に渡す。「ありがとう。」と素直に受け取った神威はごくごくとそれを飲み始める。
「お金、神威が出したの?」
水を飲んでいる彼に眉を寄せてそう聞けば、ぴくり、と一瞬反応したけれども、ごくん、と水を飲み込むと「なんで?」と聞き返してきた。
「阿伏兎にお金払いに行ったらそんな明細書なんて来てないって言うから…神威が出したのかなって。」
「そうなの?」と聞けば「阿伏兎め…」と呟きながらもまたもや素直に「そうだよ。」と笑った。
「あんなに高そうな番傘じゃなくてよかったのに。靴も。もったいないからそのままこれまだ履くよ?あと、お金も少しくらい払う。」
「…そんなこと気にしなくていいよ。」
「気にする!師団費でも気になって払いに行ったのに、ましてや神威個人のお金から出してるなんて。」
「びっくりした。」と言えば「びっくりしたの?」と首を傾げながら尋ねてくる。コクリと頷けば「そっか、そっか。」となんだか嬉しそうな神威。全然意味がわからない。
「とりあえず、俺からのプレゼントって事で。」
「神威がプレゼント⁉そんな馬鹿な。」
声を張り上げてぶつぶつこれって夢なんじゃないかな的なことを呟いていれば神威はそっとAに近づいた。
「Aってさぁ…まだあって数ヶ月しか経ってない俺のことよく分かってるみたいだよね。」
神威の言葉にぴたり、と動きを止めたAは「あ…」と声を漏らした。
「そ、そんな感じかなぁって思っただけ!くれるんだよね!じゃあありがたくもらうから!」
「さよなら!」と勢いよく部屋を飛び出していったAに神威は「変なの。」と呟いて寒くなってきたその体に服を着せた。
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作者名:咲 | 作成日時:2017年5月16日 0時