36.金の出どころが分からない ページ38
新しい靴と番傘が届いた頃、ちょうど地球で言えば秋の時期だった。待ちくたびれていたその品物を業者から受け取るとAは結構嬉しかったようで珍しくスキップしながら自分の部屋へ帰って行った。
実に3ヶ月ぶりの新しい番傘である。
靴に至っては「とりあえず来るまではこれ履いてなよ。」と神威に渡された靴を履いていた。これが神威と同じデザインで少し小さめの靴だったからぴったりだったため、「新しいのなんて頼まなくてもいいのに。」と言ったけれど「いいの。」と神威は一緒に靴を頼んだ。
一体どういうことだろう、と思って靴から先に開けては見たけれど、そこには全く同じデザインの靴が入っていて。サイズもぴったりである。
ー…とりあえずは今履いてるのでいっかー
そう思い、カタン、とその箱を閉じると机の下に置いておいた。
番傘の方は開けてみると今までは藍色のごく普通の傘だったのだが、少し暗めの赤い傘だった。こっちに至っては前もっていたものよりも随分と大きく、頑丈に作られていそうである。値段がかなりはねあがりそうだ。
「…。」
少し罪悪感を感じたAは財布を持って阿伏兎のもとへ向かう。おそらく神威が自身の財布からお金をはたいて払ってくれたとは思えない。ということは必然的に師団のお金を使っている事になる。
ー普通のものだったらこんなに引け目は感じないけどさ…ー
「あれじゃあなぁ…」
コンコン、と音を立てて阿伏兎の部屋をノックする。返事は返ってこないが、ガチャリとその部屋を開けると書類に埋められて阿伏兎が眠っている。
どこかで見た光景だ、と真選組での土方の姿を思い出しながら少し笑うとぴくり、と反応を示して阿伏兎が起きた。
「……あ?なんだ…嬢ちゃんか…。」
「どうかしたのか?」と阿伏兎が言うので、「お金を払いにきたの。」と言えばなんの金だ、と質問される。
「靴と番傘。師団費から出したんでしょ?すごく高そうだったから少しはお金出しとこうと思って。」
「いくら?」と聞けば阿伏兎は首を捻って「そんなの知らねぇ。」と言う。は?と言う顔をしてAが「そんなわけないでしょ。明細書は?」と聞けばだからそんなもの存在しない、と言うのだ。
「…大方どっかの団長さんが自分の金はたいて出してくれたんじゃねぇのか?」
そう言った阿伏兎にAも同じように首を捻った。
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作者名:咲 | 作成日時:2017年5月16日 0時