28.噂 ページ30
「今日、宇宙海賊の春雨が取引だってよ。」
「まじか!1番隊そんなでかい案件任せられてるのかよ。」
「いいなぁ、俺らなんて銀行泥棒だってよ。」なんて声を背に洗濯物を干していたA。今日は天気は晴れだとよく当たるらしい結野アナがそう言っていたのに、どんよりと曇り空だ。本当に江戸一の天気予報士なのだろうか。
そんなことを考えてしまって思わず首を振った。いやいややらされているこの仕事がいつの間にか板についてしまっている。ありがとう、なんてお礼も言われる始末だ。何とかしてぬけ出さないといけないのに。
そんなことを考えながらも手は洗濯物のしわを伸ばそうと動いているものだから思わず「くそ。」とつぶやいてしまった。
春雨が取引に来るなんていうが所詮は下っ端の下っ端が来るだけであろう。神威率いる第七師団がくることはあり得ない。
一通り干し終えて縁側に腰を下ろした。風になびく洗濯物の量に干した後に驚いてしまう。しかもここの男たちときたらパンツでさえ自分で洗いもしないのだからあきれてしまう。唯一見ていないのは土方のものだけであろう。
思わずイチゴのトランクスが目に入ってしまった。まさかあのドS男のはいているパンツがイチゴだなんて。げっそりと顔をしかめたAを視界の隅でとらえたのかここのところというかここに来てからずっと自分を監視している山崎という地味な男が「どうかしました?」と声をかけてくる。
慎重に言葉を選んだりはしない。だってやましいことなど一つもないのだから。まあ、一つ上げるとすれば神威と顔見知りだということぐらいだろうか。
「イチゴが...」
「イチゴ?」
彼は怪訝そうに顔をしかめたが、それ以上は何も聞いてこなかった。視線がパンツのほうを向いていたからだろうか。
ー早くここからでたい...ー
そんな思いなどつゆ知らず山崎は一生懸命素振りを始めたのだった。
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作者名:咲 | 作成日時:2017年5月16日 0時