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終わっていく物たち ページ48

ハク「…さ、私は少しだけ湯婆婆のところに行ってくるから。着替えて待っていて。」


千「また仕事なの…?」


ハク「いいや。少し話すだけさ。すぐ帰ってくる。」


そう言い残して
ハクは部屋から出て行った。


千尋は一人になった部屋で
着慣れたセーラー服に着替えてゆく。


その頃、ハクは湯婆婆の部屋に
淡々と向かっていた。


ハク「湯婆婆様」


ハク「…夕陽が沈む前までによろしくお願いします。」


湯「分かってるよ。こんな大仕事いつぶりかねえ。」


湯「ハク。………幸せにおなり、愚かな龍よ。」


ハク「命が失くなっても…世界などあるでしょうか。感情など…芽生えるでしょうか…。」


湯「そりゃあ死人以外には分からない。でも運命は運命を抗えす。憎い姉の言葉さ。」


ハク「お聞きしました。…それを願います。では…。」


長年
この部屋で仕事を貰って
湯婆婆にこき使われて

この魔女を憎んでいた。


でも今は
その魔女の力を借りるとき。

世界は不思議だ。


きっとこの部屋を出入りするのもこれが最後。

この廊下をあるくのもこれが最後。


自分の中から一つずつ
ありふれた物が終わっていく。


千尋だけは


特別な物だけど。


ハク「……千尋、入っていい?」


中からいいよー、と声が聞こえる。


扉を開けると
次の瞬間には温もり。


千尋が飛びついてきた。


ハク「……驚いた。珍しいね、千尋がこんなこと」


千「いつもの仕返し!!」


そう言って顔を上げない千尋の肩は
かすかに震えていて。


ハク「千尋…?泣いているの……?」


千尋はハクの胸に顔を埋めたまま
首を横に振った。


それから暫く
ハクが千尋の背を撫でてやると

千尋はやっと顔をあげた。


とびっきりの笑顔だったけど

睫毛には涙が光っていた。


千「もうハクの前で泣かないって決めたの…!」


ハク「無理などしなくていい…泣いたっていいんだよ…?」


千「ううん、ずっと笑ってる!……あとちょっとだもん…。」


ハク「じゃあ私もずっと笑っていよう。千尋を見送るまでは。」


お互い笑顔で
そう契りを交わし再び抱き合う二人


それは一見幸せその物。


しかし
もうじき運命が二人を分かつ。


その時は確実に
刻々と近づいていた。

「最後」、だね。→←朝の訪れ



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設定タグ:千と千尋の神隠し , ハク , ジブリ   
作品ジャンル:恋愛
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やっさん - この作品、完全に映画の続きの設定ですね。千尋がハクと再会し、千尋がハクとの恋におちます。切ないこのだい一篇の結末ですが、まだまだ本番はこれからです!千尋の両親の運命は?続編お楽しみに!! (2018年8月12日 20時) (携帯から) (レス) id: 6ef490f023 (このIDを非表示/違反報告)
airi - な、涙が止まりません・・・、この作品最高です^^ (2017年1月4日 3時) (レス) id: ccd59f3af1 (このIDを非表示/違反報告)
さき(プロフ) - ふゆきさん» 返信遅れてしまってごめんなさい…!最後まで読んでくださって本当にありがとうございました(´;ω;`)嬉しいお言葉励みになります、ありがとうございます! (2015年2月21日 15時) (レス) id: 3184e8d971 (このIDを非表示/違反報告)
ふゆき(プロフ) - 最後まで見て感動でいっぱいでした。 (2015年2月9日 23時) (レス) id: 83691007b7 (このIDを非表示/違反報告)
さき(プロフ) - 楚誉さん» そんな事言っていただけで嬉しい限りです!いつも見てくださっているんですね、本当にありがとうございます(´;ω;`)続編にも突っ込みそうです…これからもよろしくお願いします!! (2014年12月8日 13時) (レス) id: 3184e8d971 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さき | 作成日時:2014年11月29日 15時

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