雪が降る夜に II【ONE PIECE】

cap71 ページ28

＜ｺｰﾄﾞ＞

後悔と自責の念。

心の中でぐるぐると渦巻くそれは。

徐々に僕の心を支配していった。

僕の体を乗っ取り、“ｻｸﾔ”と名乗ったそれの顔。

それは、僕のかつての友達の顔だった。

とっくの昔に友情なんて裂けていた。

既に興味なんて無かったし、友達だとも思っていなかった。

というか、記憶にすら無かったかもしれない。

“ｻｸﾔ”は消えてしまったが、後悔と自責の念は未だに残っている。

何故、彼処で大嫌いなどと口走ってしまったのだろう。

何故、彼処で喧嘩をしてしまったのだろう。

最後に見た船長の顔。

僕が船長を睨み付けた時の船長の顔。

確かに、頬に涙が伝っていた。

僕は、謝る事すら出来なかった。

「＿＿＿なぁ、ｺｰﾄﾞ」

この重たい沈黙を打ち消したのは。

さっきまで音貝を耳に当てていた火拳だった。

「これ＿＿＿お前宛じゃねぇか??」

一瞬、耳を疑った。

「…そんなわけ無いだろ??僕は火拳に渡してくれと確かに言われ＿＿＿」

「じゃあ、これは誰宛なんだよ」

ｶﾁ、と音をたてて再生が始まった。

＿＿＿…俺がこれを渡して、何年たった??そこに俺はもういねぇだろうし、これを残す事にした。

＿＿＿新しい仲間に出会っていると良いが…、きっと君は一人で航海をしているだろう。早く仲間を見つけなさい。

＿＿＿少しは大人になったかー??お前、まだ“船長”って言ってんじゃねぇか??…寂しくなったら俺んとこに遊びに来いよ。

＿＿＿次の海賊王は俺様だからな!!!お前もそのうちぶっ飛ばしてやらぁ!!!覚悟してろよ、この野郎!!!

＿＿＿体には気をつけるんだぞ。生きとるか分からんが、岬で見守っとく。怪我したらいつでも来い。

「何だよ、これ…」

＿＿＿今から言うのは、俺達の願いだ。叶えようと叶えまいと好きにするといい…。

＿＿＿さっきも言った事ですまないが…仲間を見つけなさい。

＿＿＿もう、過去に囚われんな!!!それと、俺の船に遊びに来い!!!

＿＿＿たまには酒を飲みに来い!!!それと、いい加減にぶっ飛ばされやがれ、この野郎ーっ!!!

＿＿＿怪我と病気には気をつけるんだぞ??それと、たまには元気な顔を見せてくれ。

＿＿＿…じゃあな、“ｺｰﾄﾞ”。

ﾌﾞﾂ、と音をたてて再生を終了した音貝。

あの時、音貝に録音されているであろう中身をわざわざ言った理由がやっと分かった。

同時に、涙が溢れ落ちる。

「最近、泣いてばかりだな…」

そう言いながら、僕は自嘲気味に笑った。

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