雪が降る夜に II【ONE PIECE】

cap70 ページ27

＜ｺｰﾄﾞ＞

泣く。

壁にぶち当たり、挫折した時。

激しい悲しみを感じた時。

別れを惜しむ時。

どんなに強い人でも、そんな時には少なからず涙が目に浮かぶだろう。

だが、船長は違った。

何があっても、泣く事は無かった。

常に笑顔で、気さくで、楽しげで…。

悲しみなんて、一切感じられなかった。

少なくとも、船長が涙を見せた事は無かった。

そんな船長が初めて僕に涙を見せたのは。

最後の船長命令を聞いた時だった。

＿＿＿ｺｰﾄﾞ…これは、最後の船長命令だ。

＿＿＿…最後なんて言うなよ。

ﾑｽｯとした表情の僕。

目尻は微かに赤くなっていた。

＿＿＿まぁ、そうふて腐れるな…まだまだ餓鬼だな、お前も。

＿＿＿煩い!!!“最後”なんて言うからだ!!!

檻の鍵をこじ開け、中に飛び込んだ昔の僕は。

鎖で壁に繋がれた傷まみれの船長に抱きつき、情けなく泣き喚いていた。

＿＿＿これを、俺の息子に渡してくれ。中身は＿＿＿だ。

＿＿＿嫌だよ!!!こんな物を預かったって、船長は帰って来ないんだろ!!?いつか死んじゃうんだろ!!?

涙が頬を伝い、固い石の床に落ちた。

＿＿＿仕方のない事だ、お前のせいじゃねぇ。

＿＿＿船長の馬鹿っ!!!何で分かってくれないんだよ!!?僕はこれからも船長と冒険がしたいのに…っ!!?

ﾊﾟｼﾝ、と頭を叩かれ、思わず船長の顔を見る。

その時の船長の顔は、物凄く怖かった。

＿＿＿いい加減にしろ!!!いつまでも甘ったれてんじゃねぇ!!!

船長に怒鳴られて、我に返った。

同時に、くだらない意地が込み上げてきて。

気がついた時には、ﾊﾟｼﾝ、と船長の頬を思いきり叩いていた。

＿＿＿船長なんか、大っ嫌いだ!!!

檻を飛び出し、壊れた鍵を元通りにする。

＿＿＿もう知らねぇ!!!勝手に死んじまえ!!!

船長を睨みつけ、溢れ出る涙を拭いながら、僕はLEVEL6を飛び出た。

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