CRUSH × BUZZED × CRAZY ！？【utit】 (ページ37)

今日:6 hit、昨日:1 hit、合計:44,922 hit

6.空腹と幸福ページ37

「何しとんの、血圧測定か何か？」
「...違いますよ、違います」

あはは、と私の傍で苦笑いをこぼしたセンラさん。あの後結局、坂田さんに『いいよ』という許可を出したのだけれど。

その結果の末に見えた光景を見た、通りすがりの志麻さんは『血圧測定か何か？』と呟いたのである。...まあ、そう見えなくもない。

私の利き腕とは違う方の腕にかぶりついている、坂田さん。指はちょっと、と私が拒むと『じゃあ腕で』という話になってしまった。

...こういうの、動物番組で見たことある。笹を食べようとして幹にかぶりついているレッサーパンダの原種みたいだ。

その私の腕にかぶりついている彼を見ると、『ん？』といったような表情でこちらを見つめ返してくる。大きな瞳から上は可愛らしい雰囲気だが、口元から下が明らかにおかしい。

人間の腕に吸い付いているのだから。何も知らない人が見れば二度見する光景だろう。これを朝昼晩10分か...と考える。確かに人間の通常の食事時間と比べると、人それぞれではあるものの短い方ではある。

「そや、まーしぃ何か飲む？」
「おう、頼むわ」

センラさんがはっとして立ち上がり、入れ替わるように志麻さんが椅子に座る。私の隣にいる坂田さんは「俺には自分でせえって言うのにうらさんとまーしぃには甘いよなあ」とぼそりと呟いた。

...私の腕を食べながら喋るのは少し擽ったいからやめて欲しいのだけれど。

すぐに戻ってきたセンラさんが椅子に座ると、意図せず五人がテーブルに揃ってしまった。三人が坂田さんをじっと凝視するものだから、彼は少し居心地の悪さを感じているらしく。

「...いや、そんな見んでもええやん...」
「いや、この状況で見ないという選択肢は無いで、異様やもん」

理由を分かっている私達三人はわざと彼を見ているようなものの、先程来たばかりの志麻さんは本気で引いているような気がする。昨日も『ツッコミどころあり過ぎやろ...』と呟いていたし。

軽く先程の話をうらたさんが志麻さんにすると、「あぁ昨日の甘いって件か」とすぐに理解したらしい。

「坂田の実験中なんだよね、お菓子とAを置き換える、みたいな」
「そんな置き換えダイエットみたいな言い方...」

センラさんの言葉にけらけらと笑った彼は、マグカップの中身を啜った後に「あ」という声を上げた。