CRUSH × BUZZED × CRAZY ！？【utit】 (ページ33)

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「あ、別に扉の前で待ってたってわけやないんですよ？そろそろかなーって思って迎えに来ただけで」

言い訳甚だしい。ぽぽぽ、と頬を染めてぼそりと呟いた彼の顔が忘れられない。綺麗な顔をしていて、彼は得をしていると思う。

そんな彼に大人しく髪を乾かされている私も私である。いくら「自分でやりますから」と言っても譲ってくれなかった彼も彼だが。何故か慣れた手つきで私の髪を乾かす彼。ドライヤーは熱くないし、今まで見たことのないくらいの髪のツヤ。

その技術はどこから来るのだ、と思いながらドライヤー前にも付けられたオイルかトリートメントか、その辺りのヘアケア用品を付けられる。本当に何なんだこの人。

「はい、出来上がりです。お待たせしました」
「…いえ、ありがとうございます」

複雑である。
下心があるのかどうか分からないその表情、態度──お礼を言うと心底嬉しそうにふんわりと微笑んだものだから、ついつい彼のことを良く思ってしまいそうになるが。

正気であれ、私。

「今日はもう寝ます？」
「そ、そうですね。寝ます」

念じたところに声をかけられて少し動揺してしまったけれど、寝ることを伝えると彼は頷き私の手を引いてとある部屋へと向かった。

どうやら、ここが私の部屋らしい。
広さは以前暮らしていた部屋と特に変わらないようだ。むしろ台所などの設備がない為、こちらの方が広いような。

「えーっと。ベッド横に飲み物が置いてあって、後は…その飲み物が入ってるラックの引き出しの中に照明のリモコンとかも一緒に入ってますから。あとは──あ、お手洗いはこの部屋を出て突き当りのドアのとこです。

それぐらいですかね。何かご不明な点は？」

ホテルのコンシェルジュのような言い方である。「いや、特にないです」と返すと。「じゃあ、また朝に迎えに来ますね。おやすみなさい」と彼は部屋を去った。

ドアが閉まる音を聞き、彼の足音が遠のいたのを聞いた後で大きく溜息を吐き、ベッドへと倒れ込んだ。ふかふかの布団は陽だまりの匂いがして、今朝あたりに干したのかと容易に想像ができる。

目を閉じて今日の目まぐるしく回った出来事を思い返す。朝はいつも通りだった筈なのに、いつの間にか大きく歯車がずれ、狂ってしまった。

自分のことでいっぱいいっぱいだったが、あの後同僚たちは、上司は大丈夫だったのだろうか──