CRUSH × BUZZED × CRAZY ！？【utit】 (ページ29)

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「唾液垂らすだけにしてやろうかと思ってたけど──覚悟しろよ」

何を！？
そんな疑問が頭の隅をかすめるが、今はそんな突っ込みを入れている場合ではない。決死の抵抗もむなしく両手で顔を掴まれ、無理矢理口をこじ開けられる。

「指も舌も噛むなよ、噛んだらわかってんな？」

とても期限の悪そうな顔、それに怯えてこくこくと涙目で必死に頷けば彼は満足したかのように笑って唇を近付けてきた。

嫌だ、嫌すぎる。初対面の、しかも私を拉致した人間、いや夢魔に何でキスされなくちゃいけないのか。目をキュッときつく閉じて思考をぐるぐると回すことで現実逃避、唇に触れた感覚を私の中で無かったことにしようとする。

口内を舌で蹂躙されている気がする。気がする、気がする。そう、これは現実じゃない、どこかの夢の中である。

必死で息を止めていたからか酸欠でくらりとする感覚、そして喉に流れ込んできた甘い何か。唾液？いや、そんなこと考えたくもない。

悔しくて頬に冷たい涙が伝う感覚、それを指で拭われて、その現実とは真反対の優しさに目を見開いたその時──

「ただいま帰りました〜、あれ、団子になって何して──」

がさり。
買い物袋を落としたような音、キッチンで聞いていた弾むような声とは大違いの重低音の「は？」という声。

「あ、つまらん奴帰ってきてもーた」

後ろで私の手を掴んでいた坂田さんはそう呟いてその手を離し、膝の上に腕を投げ出していた志麻さんも瞬時に私から離れた。

三人はセンラさんの声を聞いた瞬間に彼の方を向いたから、既に唇は私から離れていた。顔を掴んでいた手を離され、視線だけを玄関のドアに向けると、そこには魂が抜けたような表情で呆然と立っている彼の姿が。

「脈は...特に変化無しか、やっぱ特異体質って訳か」

そんな中目の前の彼は冷静に私の首や手首に手を当て、私の脈を測っていた。その冷静さに感服さえする。いや、私が今は混乱しているだけ、か。

「無理矢理してごめんな、ありがと。ん」

ちゅ、という音。
また彼のその行動に目を見開くことになる。

──今、キスした？
ぼふん、と音を立てて熱くなりそうな顔、かあっと体温が上がったことを感じる。目の前の彼はしてやったというような顔でにんまりと笑い、私と距離を取った。

「な、何して──」
「ちょっと！？何ッ...はあ！？」

私の声をかき消すような大声。そう、センラさんである。