【sm】真夜中、星雲旅行24時【snr】 (ページ10)

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「はい、到着」
「Aさん、そのままでいいんで外出ましょか」

意外と大きな揺れもなく、着陸。
思い出したくもない大気圏再突入のことを除けば、飛行機なんかよりもよっぽど安全そうだった。すごいな、この人たちの技術力。と思いながら扉付近でこちらへと手招くセンラさんに近寄ろうと立ち上がった。
先程まではロケットの窓は終わりのない黒を映していたが、今はまるで────地球の春のような、景色を映している。

あぁ、私が来てほしくなかった、あの季節だ。

少し嫌な気持ちになって、憂鬱な日々が頭をかすめて。思わず顔をしかめていたのか、不思議そうな顔で金髪の彼が私にどうしたんですか？と聞くが。
彼らには、これからの私には必要ない話だと思って「何でもないです」とあいまいな笑みを返した。

「扉、開けますよ」

そう言って扉付近の操作盤だろうか、それを彼が叩くと、公園で見た時と同じようにロケットの扉が開いて。
外は、地球そのもの、同じ景色で。
戸惑って彼らの顔を見ると、「同じ景色かもしれないですけど、違う星ですから」と私が思っていた疑問の答えを見事に返してくれて。
違う星だから、そうか。違う星なら、大丈夫か。

そう思って先に進む彼らと同じように扉をくぐると。
何か、柔らかい壁に当たったような感覚。わっ、と目の前のその壁を拒もうと、瞬間的に腕を顔の前に持ってきていたけど。
既にその壁は私をすり抜けていて。腕に触れるのは壁ではなく、春の風、それに乗ってやってきた桜の花びらだった。

「日が出てる間の桜ってこんな感じやったんや、ピンク色かあ」

桜について物珍しいものでも見るように言った紫の彼の方を見ると。

「…え、その制服」
「え？あぁ、これ。今ロケットから降りたら変わったな」
「Aさんも制服になってますね」

そういう彼も、うちの学校の制服を着ている。
ど、どういうこと。困惑する私をよそに、彼らは「地球の学校の制服ってこんな感じなんやね」とか「意外と似合ってるやん」なんて言い合っていて。
私の格好もセンラさんが言う通り、制服で。ちなみにしっかりと通学用の鞄もいつの間にか持っていた。
何か違うところがあるとすれば、一年で少し私に馴染んでくたびれた筈の制服が、まだ新品、おろしたてのような手触りで。かつ、通学用の鞄は今と比べると少し軽い。

────もしかして、一年前に戻っている？
ふとそれが頭によぎった瞬間、ひどく吐き気を催した。