【sm】真夜中、星雲旅行24時【snr】 (ページ5)

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「じゃあ、そこに座ってもらって」

紫の彼が指差したそこには、高級そうな椅子。
背景が公園だから、ちょっとチグハグなのだけれど。どこから持ってきたんですか？と聞いても「宇宙人マジック」と何故か笑顔で誤魔化されてしまった。
素直にそこに座ると、黄色の彼が私の前に跪いて。

「それじゃ、失礼しますね」

パチン。彼が指を鳴らすと、手元に綺麗なガラスの靴が。
僅かな光を反射して辺りを七色に照らすそれに、思わず見とれて。綺麗、と思うと同時に、今の仕組みが気になって。
どうやったんですか？と聞いても、彼にも「宇宙人マジック」と誤魔化された。
いや、なんなんだ、宇宙人マジックって。

黄色の彼にボロボロのスニーカーを脱がせてもらって。
差し出されたガラスの靴に足を入れると────

「……ぴったり」
「えぇ、Aさんのための特注品、ですからね」

ふわりと微笑む彼に目を奪われて。
特注品、特注品。いい響きだな、と頭の中で何度も反響させる。

「さ、お手をどうぞ」

立ち上がった黄色の彼と、椅子の後ろにいたはずの紫の彼が目の前にいて。
彼らに手を差し出されて、両手でその手を取って。

すると、みるみるうちにその手から────美しい、光が溢れて。
レースの綺麗な手袋が指先から編まれていき、まるで肌まで白くなっていくような光に包まれて。
フリルが重なった袖に、胸元には綺麗なネックレス。

気が付けば、物語に出てくるお姫様が着ているようなドレスに包まれていた。

「こ、これも？」
「おん、宇宙人マジック」

だから宇宙人マジックってなんなんだ。
地球人には未知の科学技術なのか、本当に魔法の類なのか。
自分の着ているドレスを揺らしてみても、高級そうな手触りの良い布に包まれている事への実感が湧いてくるのみ。
思わず口から零れる、「綺麗」や「凄い」という言葉に彼らは満更でもなさそうな顔をしていた。

「それじゃあ、我らの姫君」
「行きましょうか、我らの星へ」

恭しく頭を下げられて、エスコートされるけど。
ガラスの靴を履いて向かうのは、かぼちゃの馬車じゃなくてロケット。
子どもの頃夢見ていたそれとは少し異なるけれど、素敵なドレスに包まれて心が踊っているのは確かであった。

深夜24時。シンデレラの魔法が消えてしまう時間に魔法にかけられた私は。
夢の続きを、見ることが出来るのだろうか。