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いつの間にか自室の前へ戻ってきていた。
「ちょっと色々詰め込みすぎて混乱するかもしれんし、今日はここら辺までにしとこうか」、と私を気遣ってくれていた。
「あー、えっと、……志麻くんのことなんやけど」
─────来た。一番聞きたかったことだ。
「なんか誤魔化したってことは多分、聞いてほしくないことなんやろうし…気にするなってのは無理かもしれんけど、話してくれるの待つしかないかもしれんな
あと……、最近志麻くん、根詰めすぎてる気もするからさ。ちょっと何か変な事あったら、俺に教えてくれると嬉しいかな」
こくこくと頷き、また思考の渦に戻る。私たちは生前の記憶が無いようだから、仕事をしている時に…もしくは何かの本で…などと考えたが、疲れてしまったであろう頭ではこれといった正しいと感じる理由は思い付かなかった。
坂田さんと別れた後、自室の設備等も触って情報と擦り合わせを行っていたが、やはり疲労感には勝てずにそのまま眠りについてしまった。
何時間ほど眠ったのか、わからないまま自然と目が覚めた。
そばにあったカーテンを開けるとまだ外は暗い。坂田さんは「皆寝てたりしてないといいけど」というような話をしていたし、そこから考えると私の目が覚めたのは夜だった筈。
むくりと起き上がり、あたりを見回して時間を確認できるものが無いか探すが、時計は無い。
坂田さんから伝えられていたスケジュールによると24時間後に新しくお客様を迎えるようで、志麻さんがそのお客様の魂に触れて料理を編み出した後、私の初仕事は72時間後になる。
気を引き締めるようにグッと拳を握り締め、ベッドから起き上がる。
寝癖が付いていないことや、衣服の清潔感は保たれていることに若干の疑問を抱きつつ、やはり着替えないままというのも少し気持ちが悪いな、と感じたので眠る前に確認していたクローゼットから新しいワイシャツを取り出し、袖を通す。
洗面所に洗濯機等も一応あった筈だから後で先程着ていた方を洗いに行こう。
一通り身だしなみを整えた後で、昨日案内された厨房に行けば坂田さんに会えるかも、と自分の部屋を飛び出した。
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作者名:#N/A | 作成日時:2021年4月22日 21時