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その後、「すまん、俺はここの片づけが残ってるから」と志麻さんは坂田さんへ私の案内を任せ、坂田さんも坂田さんの方で何も触れない方がいいと思ったのか、スプーンを落としたあの一連の流れについて何も聞くことはできなかった。

そもそもの話、私の名前を知っていることは別におかしなことではないのだろう。
私が最初に遭ったあの情報が流れ込んでくる現象、あれが私が来る前に彼らに起こっているのかもしれない。そういう可能性もある。

……それとしてもあの信じられないような表情で私を見ていた志麻さんが考えていたことは多少、気になるのだが。


「じゃ、さっき言うとった通り他の部屋ん中とか案内してくな」
「は、はい。よろしくお願いします。」
「んー、他のスタッフとも一応顔合わせといた方がええか。皆寝てたりしてなかったらええんやけど…」


厨房を出た坂田さんは先程来た道を戻り、こっちこっち、と手招きをしている。

その後ゆっくりと洋館内の設備を説明してもらい、他のスタッフとの顔合わせも済んだ。
ただ、


「ここのスタッフさんって、感情に乏しい方が多いみたいですね」
「うん、まあ、そもそも身体が大きいままここに連れてこられて自分の記憶でもない情報を無理矢理頭に詰め込まれたらそりゃ感情が生まれる前にああなるわな…て感じ」
「そう、なんですか」
「の割には結構Aちゃんって感情、あるような気ぃするわ。俺は」


「今まで一緒におったやつで1人ぐらい…かな、そういう人おったけど、珍しいで、ホンマに。」と嬉しそうに話している。
挨拶してきたスタッフの方々は殆ど感情と呼べるものは無く、数人程は坂田さんや志麻さんのような──とはいっても彼らほど感情豊かであるというわけではないが──感情を持つ人がいたが、ほんの一部である。

そう考えると私が今こうして思考しているのは、表に出にくくとも実際感情豊かである証拠なのかもしれない。


「俺ら、多分役職が上に上がるごとに感情とか思考の幅が広がっていくんだよね。広がっていくっていうか、ロックが外れるみたいに」


「感情が比較的豊かだった人らはシェフ・ド・パルティの人達なんよ」、と言う。
「最初っからこんな感じなんやったらさ、もしかしたらAちゃんって料理人としての才能もあるんちゃう!?」なんて、茶化しながら。

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作者名:#N/A | 作成日時:2021年4月22日 21時

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