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「そういえば、お二人共一緒に書斎にいるのは珍しいですね...?」


「あぁ、それは」と机の上に散らばった紙を指差して、「レシピ探してたんよな」と坂田さんが一言。
机の上に置かれたその紙は手書きのメモのようで、上の方に料理名が書かれている。

筆跡が全て同じ人物が書いたように感じられるものだが─────正解だ。下の方にどのレシピにも「Urata」とサインが書かれている。前料理長のレシピ。
志麻さんがご馳走してくださったカナッペを作る際に、確か同じような種類の紙を坂田さんが志麻さんに渡していた。


「ほら、前お肉の方も食べさせたるって約束したやん?それでレシピ探しとこかなって」


それでまーしぃにも手伝ってもらって探しとってん、と机の上を見回して彼は言った。
つられて見るとレシピの量がとんでもなく多いことに気付く。この広い机に全て並べられる量なのだろうか、紙の劣化具合から見て全て同じ時期に書かれたものだろう、そんな量を残してくれていた前料理長に畏怖の感情すら抱いた。


「...あ、約束といえばここでLa Cèneについて調べる話もしとったな」
「お前、あん時『俺はいっぱいAと約束してるからいいや』とか言って一人で納得してたのに忘れとんのか...」


う、と額に汗をかいて持っていたレシピをついつい握りしめてしまった彼は、わっ、とシワにならないようにすぐ手を離して机の上でレシピを伸ばした。
「あ〜もう」なんて志麻さんが世話を焼くように坂田さんに近付いて行くのを見て、まるで本当の兄弟のようだな、なんて。


「セーフセーフ、危な...」
「紙結構脆くなってるから気ぃつけや...ホンマに...」


二人して焦っているのを少し面白いな、なんて思っていると坂田さんがこちらを向いて話し始めた。


「ステーキは何回も焼かされたから正直レシピは一通り頭に入ってるんやけど、一応あった方がええかなって。はい」
「...?はい」


渡されたレシピを見ると、ステーキや付け合せの野菜について詳細に書かれていた。
肉の焼き加減等が事細かに記されており、こだわりが強いことが伺える。


「一緒にやってみる?」
「...!いいんですか?」


「もちろん」、という言葉に、「よろしくお願いします!」と頭を下げた。
スイーツはまだ先になりそうだが、部門外の料理について学ぶのも必ず自らの糧になるだろう。

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作者名:#N/A | 作成日時:2021年4月22日 21時

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