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「あ!おはよAちゃん!」


元気な声が聞こえてきた。声の方へ視線を向けるとそこにはやはり坂田さんの姿が。

隣で志麻さんも片手をあげておはよう、というように手をひらひらさせている。
初日やから迎えに行ったげたほうがいいかなって、と駆けてきた坂田さんが少し頬を染めながら、得意そうに腰に手を当て胸を張っている。
とてもありがたいのだが、そんな彼に頼もしいと思うより可愛らしいなと思う自分がいて、少し自身の感情に戸惑う。
迎えにきてくれたことにお礼を言って、不安に思っていたことを口にした。


「仕事については頭に入っている筈ですが…不安なので一度確認してもいいですか?」


彼は頼られたことが嬉しかったのか、何でも聞いて!と目をキラキラさせていた。
こちらも教えて下さる方がこう積極的だととても聞きやすい。

仕事の一連の流れについて一通り聞き、お客様を迎える前の打ち合わせを終えた後玄関ホールにて全スタッフと共にお客様の到着を待っていた。
志麻さんと坂田さんは料理長と副料理長だから、私とは離れた場所にいる。
私は隣にいる同じウェイターだろう、先輩の表情を伺いつつ、何も粗相がないように背筋を伸ばす。

ふと視界に何かがチラつき、後ろの方を見ると控えめに手を振っている坂田さんの姿が。
私が振り向いたことに気がついたのか、ぱあっと笑顔になったあと「が、ん、ば、ろ!」と声は聞こえないが、そう言っているように見えた。

私が少し緊張しているのが伝わったのか、緊張をほぐそうとしてくれているようだ。
あ、隣にいる志麻さんに小突かれてる。

私もしっかりしなければ、と正面の扉を見据えて姿勢を正した。


足音がする。
ひとつ、ふたつ、みっつ、やがて数えられない程にまで。
やがて洋館の大きな扉がひとりでに開き、中へと彼らは招かれる。
1番、目に付くのは大きな棺だ。それを周りの黒のローブを身にまとった性別がわからない人型の何かが運んでいる。私は後ろを振り向いてはいけないはずだから、通り過ぎてからの様子は伺えないが志麻さんと"それ"が何か挨拶を交わしている様子、であることは小さく話し声が聞こえる為、そのようだと推測できる。

『心よりお待ちしておりました、お客様────"La Cène"へようこそ。』

その声だけがやけにはっきりと耳に届き、心より先にそれを覚えていた身体の方が深く頭を下げた。

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作者名:#N/A | 作成日時:2021年4月22日 21時

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