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「センラの、雰囲気っていうか…魔力みたいなのを感じた」
「ちょ、っと…それってどういうことなん、それはおかしいやろ」


先程からわからないことだらけだ。
彼らが混乱しているということは、ここに来たばかりの私がわかることなどほんの一部でしかなく、彼らが「おかしい」と感じることが「何故おかしいのか」を理解することができない。

ここで目が覚めた際に一通りの情報は頭に流し込まれたようだが、坂田さんが言うように一部欠けているところがある。


「魔法、とか魔術って使えたとしても料理長だけやろ、俺も使えへんのに」
「そのはず、やねんけど。確かに、センラの…疲れとるんかな、俺」


2人共考え込んでしまい、周辺に点々とある椅子に座って頭を抱えていた。

坂田さんは額に手を当て、志麻さんは坂田さんから先程センラさん、の懐中時計を貰い、蓋を開けたりして色々確認しているようだが手掛かりが一向に見つからないようで口元に手を当てたまま難しい顔で黙りこくってしまっていた。


「…そういえば、A。なんでこの懐中時計がいいって思ったん?」


志麻さんから急に話しかけられ、驚きつつもその懐中時計を手に取って思ったこと、その感情をページを戻すように思い出して口に出す。


「……なんとなく、懐かしいな、と思ったからです。私に懐かしいと思う感情があるかどうかすら、よくわかりませんが」


少し、彼の目が見開かれたような気がした。
そっか、と短く返事をすると、ゆっくりと立ち上がって私の方へ歩き出し、目の前で立ち止まると懐中時計を差し出された。

私が不思議そうな顔をしてどうすればいいのか戸惑っていると、「これ、使い」と受け取るように促された。


「え、でも。大切なものなんじゃ…」
「ええよ。というか、そもそも…多分、Aがおらんかったらこの懐中時計自体見つけられへんみたいやったし。そういうことなら、Aが持ってることに意味がある」


本当に貰ってもいいものなのか、不安に思い坂田さんの方へ顔を向ける。
彼は今の志麻さんの言葉に納得したようで、真剣な顔で頷いた。

それなら、と自らの手を差し出してその懐中時計を受け取った。


「今考えてもわからへんことだらけやし…一回、厨房に戻ろっかな」


ぽつり、坂田さんが天井を見つめながらそう零した。
お客さんを迎える準備もせなあかんし、そうしよか。という志麻さんの肯定に、倉庫の扉へ全員が歩みを進めた。

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作者名:#N/A | 作成日時:2021年4月22日 21時

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