奇しくも愛しい【ジョジョの奇妙な冒険】 (ページ12)

今日:17 hit、昨日:4 hit、合計:9,855 hit

悪夢の化身ページ12

.

「お待たせトリッシュ」

Aが黒地に赤い花々の刺繍が施されたスカーフを解くと、ウェーブがかった豊かな髪が日差しをいっぱいに含んできらきらと光を放つ。

意図しているのかいないのか道ゆく誰もが一度は彼女の姿を視界に収めて… 中には 2、3 回振り返っていく者も居る。

通りに面したテラス席を選んだことをAに少しだけ申し訳なく思った。

「私ってばもう少し場所を考えればよかった」

向かい側へ腰を下ろしたAは私の視線の先を辿って後ろを振り返る。

「仕方がないよ私だって慣れないもの」

そういえば、Aのこの髪は後天的なものだと以前聞いたことがある。父譲りの髪と瞳。“彼女たち”の父親は酷く蠱惑的な人物だったに違いない。その遺伝子は片割れのジョルノよりも色濃く現れているように思える。

Aと出会ったあの日、いやらしいほど白い肌に炎々と燃えるような赤い瞳の彼女に見つめられたときこれは堕天使や悪魔の類で私は悪い夢を見ているんだと彼女の手を払い退けてしまった。

私は彼女を非日常へと引きずり込んだ悪夢の化身に仕立て上げることで目を覆いたくなるような現実からの逃避を試みたのだ。