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僕だけの淡桃だったのに ページ11
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腹這いになって座席の下を覗き込み ひとが躊躇いなく 踏みつけるフロアマットに、同じくなんの躊躇いもなく 手を這わせる僕は 愚かだと思う。
しかし、ミスタの背中が見えなくなると その瞬間を待ち侘びていたかのように 運転席から転がり出た僕は そのままの勢いで後部座席のドアを開け放って 一心不乱に 花弁を拾い集めた。そうしなければ 気が治らなかったのだ。
スーツが汚れるのも構わなかった。
埃っぽいフロアマットに膝をついたままで 掌の上、砂埃にまみれた淡桃色の花弁がすっかり萎びているのを ぼうっと見つめる。
そうだ これは、僕の部屋の洗濯機の中に押し込まれて 溢れんばかりに広がっていた あのミニドレスと よく似ている。
僕は、僕だけのAの象徴を上書きされた気がして そのことに酷く腹を立てたのだ。
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作者名：孔雀の子 | 作成日時：2019年3月31日 8時
