【文スト】福沢諭吉 恋愛集【男主】

愛が一つ　来客 ページ36

福｢…｣


手にあるAの写真。


幼い頃、シャボン玉で遊んだ時のだ。


私が吹いて作ったシャボン玉をAが嬉しそうに追い掛けていた。


吹いたシャボン玉が全て消えると｢もっともっと！｣とお願いしてきた。


駆け回る姿がとても愛おしくて私はずっとシャボン玉を吹いていた。


まぁ、駆け回っていた子が転んで泣き叫ぶまでだったが。


とても、可愛かった。


あんなに小さかった子が、今では私と同じ位まで成長したのだ。


しかも、今では恋人関係…。


二ヶ月程経っているが、まだ手を出せていない…。


いや語弊的にあれだが、私はもう歳でもあるからな。


チャンスは逃したくないのだ。


福｢…会いたい｣


社長室のドアを開ければ会えるのだが…仕事中だからな…。


向こうが。


私は仕事中断出来るからな。


良し、会いに行こう。


私は写真をデスクの中に仕舞い、立ち上がった。


ドアに向かい、開けた。


福｢…｣


…居ない…。


何故居ないのだ…。


いや、出掛けているのならまだ良いが、何故私に何も言わんのだ。


恋人である前に上司だぞ。


いや上司である前に父親だぞ。


父親に何故言わない。


帰ってきたら問い詰めてやる。


女｢あ、あの！｣


福｢！｣


目の前に、見知らぬ女性が居た。


事務員でも無い上、最近は事務員の面接も無い…。


…依頼人、か。


福｢何用だ｣


女性の目を見ると、もじもじと指先を遊び出した。


手短にして欲しい。


女｢ひっ、一目惚れをしました!!｣


全｢!?｣


福｢私に、か…？｣


女｢はい!!｣


女性は目を輝かせた。

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