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憂鬱をぶら下げながら停留所まで歩く。
行きよりも長い道のりだと感じたのは、
まだバスが来るまで時間があるようで、停留所にある雨晒しになり老朽したらしいベンチに2人で腰掛けた。
2人分の重みでベンチは、確かに私たちの存在を示すかのように軋んだ。
そのまま暫く沈黙が続き、終いにフウマさんがスマホをいじり出したので、私は思い切って先程の話で気になったことを口にした。
「フウマさん」
「何?」
「妹さんってどんな人ですか?」
「別に知らなくてもいいだろ。今後会う機会ないかもしれないし」
「気になったんです!」
沈黙を真っ直ぐ突き破る私の大声にフウマさんが目を丸くするのが見えて、私はすぐに身を縮こまらせた。
やってしまった、と苦い後悔が沁みる。
しかしそんな私の不安を他所に、フウマさんは空を仰いで笑った。
「そ、そんな笑うとこありました!?」
「いーや、必死だなあと思って。そんな妹の事が知りたいくらいヤキモチ妬いてんの?」
「そんなつもりじゃ......」
曖昧に否定しては見たが、フウマさんははいはいと軽く流して相手にしてくれない。
「妹のことなんか知らなくたって、今俺はお前の目の前にいて一緒に暮らしてる。十分だろ」
「そうかもしれないけど......」
「......だから聞いても無駄なんだって。俺の妹は死んでる」
よく澄んだ晴空にふわふわ浮かんだ重たい言葉は、どうやら漂って私の耳に入るのが幾らかおくれたらしい。
それくらい、彼の言葉を理解するのに時間があった。
同時にフウマさんの横顔が逆光の中で歪み、刹那、悲しげな表情を浮かべたように見えて私は慌てて目を逸らし俯いた。
妹さんのことを簡単に打ち明けようとしなかった時点で、引けば良かったのに。
話題を転換する気配りくらいすれば良かったのに。
頭の中で見知らぬ誰かにひたすら罵倒される。
「でも」
そんな私を柔らかな毛布で包むような声が、逸らした方向から降りかかる。
「いいやつだった。人一倍弱くて脆くて、花が好きなやつだった。いつも真っ白な気持ちと体で俺を追いかけ、俺に笑いかけるんだ。最後は、変わってしまったけど」
「変わった?」
私はゆっくり、首を擡げた。
彼は一本煙草を咥える。
「俺もよく知らないんだけどな。妹は別の家庭で育ってるからどんな風に暮らしてるとか。ただ、最後に会った時は別人だった。性格も、口調も、佇まいも」
フウマさんは悲しいのか悔しいのか、燻んだ感情を吐き出すように煙を吐いた。
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miU(プロフ) - おかえりなさい!これからの更新楽しみにしています! (2018年4月25日 7時) (レス) id: b909dcbe9a (このIDを非表示/違反報告)
Ryrie**(プロフ) - みうさん» みうさん、ありがとうございます。これからさらに落ち着かなくなるような展開を考えていますので、是非最後までお付き合いくださいませ。 (2018年1月13日 22時) (レス) id: 3c581ac854 (このIDを非表示/違反報告)
みう - どきどきして心が落ち着きません!続きを楽しみにしています! (2018年1月7日 23時) (レス) id: b909dcbe9a (このIDを非表示/違反報告)
Ryrie**(プロフ) - カグラさん» カグラさん、ありがとうございます。まだまだ序盤ですがこれからも見てくだされば幸いです。 (2018年1月5日 22時) (レス) id: 3c581ac854 (このIDを非表示/違反報告)
カグラ(プロフ) - ずっと待ってました!この世界観が好きで更新するたび楽しく読ませてもらってます(о´∀`о)これからも待ってます! (2018年1月4日 14時) (レス) id: 55da401ce9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紅島 | 作成日時:2017年9月20日 16時