No.3 ページ4
ネモの己を探す旅は始まったばかり
確固たる自分がないというのは苦しいが、胸を抑えて蹲ってる場合でもないのだ
『ここ…植物園？』
目の前にはガラス張りの建物
特に宛もないのでわたしはそこに入ってみる事にした
中に入ると多種多様な植物に迎えられた
数多の芳香が混ざる空間は空気が澄んでいてとても気持ちがいい
『こ、れは…』
宛もなくブラブラと歩く途中、全体的に細かい白毛に覆われた緑白色の葉を見つけ足を止めた
植物から漂う独特な匂いに眉を顰める
『ニガヨモギ…』
これはニガヨモギ。苦艾
『………』
目を伏せる
なんだかわたしはこれに身に覚えがある
植物自体ではなく、それに関連する何かと
頭がズキンと痛んだ
すると突如ぐわんぐわんと揺さぶられるような感覚がわたしを襲う
『う、うぅ、あぁあ…』
なにか
『(…こわい)』
実体のない何かにわたしは怯える
感覚的な恐怖がネモを襲う
ガクガクと足が震え出した
その時
「誰か居んのか」
『！』
低い声がした
すると同時にわたしを襲っていた正体不明の恐怖が霧散する
「…誰だテメェ」
『え、ぁ…』
顔を上げると頭から耳を生やした男がこちらを訝しげに睨んでいた
また別の恐怖に苛まれわたしはビクッと肩を揺らす
そんな怯えて固まるわたしを見て男の人は呆れたように一度ため息をついて踵を返してしまった
『(…あれ、この人)』
…どこかで会った気がする
またズキンと頭が痛んだ
『(ぼうっとしている場合じゃない！)』
既視感があるということはわたしの記憶の手掛かりに違いない
わたしはパチンッと頬を手で叩き気を取り直して男を追い掛けた
「……はァ。俺になんか用でもあんのか」
『い、いえっ、あのっ』
男は慣れたように温帯の植物に囲まれた茂みへと入っていった
そこに聳え立つ一本の木の下に座った男はわたしを見て再びため息をつく
髪を掻き上げる仕草がとても様になる男だ
『えっと……』
なんと言えばいいのか迷っていると、ふと男の傍らに柔らかそうなブランケットがあるのに気付いた
だが男はそれを使う素振りはない
何のためのブランケットなのだろうか
『…使わないんですか、それ』
「あ？」
わたしの視線の先に気付いた男が動きを止める
ブラウンのそれを見つめる彼の視線は何処か憂いを帯びていた
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くらげ - コメント失礼します！2シリーズ続いて読みました。なんか伏線とか伏線回収とか綺麗すぎて五芳星とか厄災とかもうほんとにすごかったです！次回作が作られたら速攻で見ます！これからも頑張ってください！！ (12月3日 10時) (
レス) @page50 id: 09404ca91f (このIDを非表示/違反報告)
サカ - 初コメ失礼します！全部一気読みしてしまいました。すごく素敵な物語だと思います!!!!今まで読んだ中で1番好きです (2023年1月22日 22時) (レス) @page50 id: 0270587d36 (このIDを非表示/違反報告)
やぎ - 初コメ失礼します！！この前の小説も今回もとても素敵なお話でした！初めて夢小説で泣きました(T ^ T)これからも更新頑張ってください！ (2022年9月25日 12時) (レス) @page50 id: c3ead30411 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫(プロフ) - 初コメ失礼します！！！！！とりあえず神作をありがとうございます:( ;´ཫ`;):シリーズ一気読みして何度泣いたことか…感動やばいですコレ…こんなに泣いたのは久しぶりですwこれからも投稿頑張ってください！応援してます！ (2021年11月12日 13時) (レス) @page50 id: d86b6fe909 (このIDを非表示/違反報告)
次亜鉛素酸 - 一気読みを今更させていただきました。伏線やら何やらもう神ですね(語彙力)もうコメントをご覧になっていないと思いますが、素晴らしい作品をありがとうございました。 (2021年10月26日 1時) (レス) @page50 id: 1c5b1c4456 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ﾆﾉｺｺ
| 作成日時：2020年12月25日 18時
