炎天の記憶 �� ページ30
(カリムside)
『此方は手癖が悪いので』
難なく拘束を外した妹はそう言って服を上から脱ぎ出した
「…何をするつもりだ」
下着姿になった妹に俺は嫌な予感がして妹を睨んだ
『兄さま、静かに』
「っ、！」
妹が持ちうる魔力で俺の口を魔法で塞ぐ
俺は呻きすら零せず、声は喉に溶けていった
『此方はお着替えの魔法も得意なんですよ』
妹が指を振る
すると俺の衣服は一瞬で剥がれ、代わりに妹が今まで纏っていた服が体を覆っていた
「っ、……っ！」
妹は俺から剥いだ衣服を何食わぬ顔で身に付け始める
そして最後には、顔全体を覆っていたベールを取ってそれを丁寧に俺の頭に掛けた
『小麦色に焼けた肌、お揃いの赤色の瞳。兄さまと此方が兄妹で良かった』
女物の衣服を纏い、頭からベールを被った俺はどこからどう見ても妹の姿だろう
やめろ
俺の声は音にならず掻き消える
『＿＿＿
それはまるで祈り
これから起こること…これから自分が起こすことが全て上手く行きますように
そんな声が聞こえてくるようだった
『最後に成り代わる相手が兄さまで良かった』
俺の目の前にいるのは正しく俺だった
妹は、俺という仮面を被った顔で笑う
『アブーによろしく。それから、ジャミルも』
俺に成りすました妹が自らの手に枷を嵌めた
「おいガキ共！立て！」
そこでちょうど誘拐犯の男が部屋に入ってきた
妹は俺の顔でニカッと笑い口を開く
『なぁオッサン！人質は俺だけでいいだろ？従者は逃がしてやってくれないか？』
「やだね。そいつが告げ口して俺らの足取りがバレたらどうする」
『変装してるんだろ？子供の証言だけじゃ顔はバレねぇって！
な？こいつ俺の大切な奴なんだ。俺のことは好きにしていいから、こいつだけでも逃がしてやってくれよ』
言葉巧みに妹が大人達を言いくるめていく
俺は芋虫のように転がっているだけ
『それに子供は少ない方が目立たないし』
「あーあーあー分かったようるせぇな。だが逃がしはしない。その餓鬼はここに転がしておく」
『…それで十分だ』
それから妹は男らに引き摺られるようにして連れて行かれる
＿＿＿愛しています
扉を出る間際、妹が音もなく口で象った
それがあいつの最後の言葉だった
それから俺はアジーム家に救出され
後日、実家に差出人不明の贈り物が届く
血塗れの妹の首だった
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くらげ - コメント失礼します！2シリーズ続いて読みました。なんか伏線とか伏線回収とか綺麗すぎて五芳星とか厄災とかもうほんとにすごかったです！次回作が作られたら速攻で見ます！これからも頑張ってください！！ (12月3日 10時) (
レス) @page50 id: 09404ca91f (このIDを非表示/違反報告)
サカ - 初コメ失礼します！全部一気読みしてしまいました。すごく素敵な物語だと思います!!!!今まで読んだ中で1番好きです (2023年1月22日 22時) (レス) @page50 id: 0270587d36 (このIDを非表示/違反報告)
やぎ - 初コメ失礼します！！この前の小説も今回もとても素敵なお話でした！初めて夢小説で泣きました(T ^ T)これからも更新頑張ってください！ (2022年9月25日 12時) (レス) @page50 id: c3ead30411 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫(プロフ) - 初コメ失礼します！！！！！とりあえず神作をありがとうございます:( ;´ཫ`;):シリーズ一気読みして何度泣いたことか…感動やばいですコレ…こんなに泣いたのは久しぶりですwこれからも投稿頑張ってください！応援してます！ (2021年11月12日 13時) (レス) @page50 id: d86b6fe909 (このIDを非表示/違反報告)
次亜鉛素酸 - 一気読みを今更させていただきました。伏線やら何やらもう神ですね(語彙力)もうコメントをご覧になっていないと思いますが、素晴らしい作品をありがとうございました。 (2021年10月26日 1時) (レス) @page50 id: 1c5b1c4456 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ﾆﾉｺｺ
| 作成日時：2020年12月25日 18時
