No.8 ページ9
イモガイちゃん
それはかつてこの学園に特別に入学を許可された、とある優秀な女性のあだ名
そして獅子の耳を持つ男が密かに恋をしていた相手
ジェイド・リーチの記憶の中、木漏れ日の下で彼女が笑う
清廉なる雰囲気と裏腹に、毒と強さと寂しさを秘めている災厄の器
何故か、ネモは彼女に惹かれてしまう
ネモの中の自分でも分からぬ得体の知れないナニカが、彼女に共鳴している
「ジェイド?」
『…いえ、なんでもありません』
フロイドに呼ばれ慌てて首を振って思考を切り替えた
『(また何かに呑まれそうになってた…)』
植物園の時ほど強くはないが、それでもジワジワとネモの内側に何かが侵食しているような、そんな感触
「オレ、やっぱこの先は入れないや」
ポツリと、隣のフロイドがそんな事を言った
彼の視線の先は、とある部屋を隔絶している焦げ茶の扉
この扉の先は、あの女の子が最期を迎えた部屋に繋がっている
「ここはさぁ、イモガイちゃんとお喋りしたりゲームしたりラウンジのメニュー考えたり、たくさん思い出が詰まってっけどさ」
記憶の中のフロイドらしくない、弱々しい声だ
「……楽しい思い出よりも、棺に入ったイモガイちゃんの姿思い出すから、ダメだわ…」
『フロイド…』
片割れの名前を呼ぶだけでそれ以上は何も言えず口を閉ざす
ジェイド・リーチの思考回路を模倣したところで掛ける言葉が見つからない
「イモガイちゃんにはいっぱいお世話になったのに、ヒデェ事たくさん言った…」
酷い事……深淵の日の事だろうか
確かに記憶の中のフロイドは彼女に罵詈雑言を投げ掛けている
それが偽りの言葉であろうと、今も尚フロイドはその事が心に引っかかっているらしい
「ディアソムニアにいた頃もずっとオレのこと気にかけてくれたし、転寮の時もたくさん手伝ってくれた」
入学時、フロイドは元々ディアソムニアに振り分けられていた
片割れ達と引き離されて怒り狂う彼を宥めたのも、今は亡き彼女だった
面倒臭い転寮の手続きを手伝ってくれた記憶はジェイド・リーチの中にもある
「ディアソムニアにいた時、イモガイちゃんがホットミルク作ってくれた事あんだけど……、むしゃくしゃしててカップ叩き割っちゃったんだよね」
オレほんと最低…と扉にフロイドが寄りかかった
「……会いたいなぁ」
ズルズルとしゃがみこむ彼に合わせ僕も隣に腰を下ろす
『……僕もです』
彼女に会ってみたかった
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くらげ - コメント失礼します!2シリーズ続いて読みました。なんか伏線とか伏線回収とか綺麗すぎて五芳星とか厄災とかもうほんとにすごかったです!次回作が作られたら速攻で見ます!これからも頑張ってください!! (12月3日 10時) (レス) @page50 id: 09404ca91f (このIDを非表示/違反報告)
サカ - 初コメ失礼します!全部一気読みしてしまいました。すごく素敵な物語だと思います!!!!今まで読んだ中で1番好きです (2023年1月22日 22時) (レス) @page50 id: 0270587d36 (このIDを非表示/違反報告)
やぎ - 初コメ失礼します!!この前の小説も今回もとても素敵なお話でした!初めて夢小説で泣きました(T ^ T)これからも更新頑張ってください! (2022年9月25日 12時) (レス) @page50 id: c3ead30411 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫(プロフ) - 初コメ失礼します!!!!!とりあえず神作をありがとうございます:( ;´ཫ`;):シリーズ一気読みして何度泣いたことか…感動やばいですコレ…こんなに泣いたのは久しぶりですwこれからも投稿頑張ってください!応援してます! (2021年11月12日 13時) (レス) @page50 id: d86b6fe909 (このIDを非表示/違反報告)
次亜鉛素酸 - 一気読みを今更させていただきました。伏線やら何やらもう神ですね(語彙力)もうコメントをご覧になっていないと思いますが、素晴らしい作品をありがとうございました。 (2021年10月26日 1時) (レス) @page50 id: 1c5b1c4456 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ニノココ | 作成日時:2020年12月25日 18時