【ツイステ】親愛なるタコに呪いを贈る

第36の呪い ページ38

お父さんのその台詞にはっと息を呑む



『お父さん、私…』

〔自分の娘の考えてる事くらい直ぐに分かるとも〕



電話越しでも分かる程悲哀に満ちた声





『(＿＿＿＿あぁ、お父さんには全てお見通しなのかぁ)』



自分の考えてる事、やろうとしている事


それを見越した上で私と言葉を交わす父により一層涙がボロボロと零れた





『……お父さん、ごめんなさい』

〔…………謝るな〕


間を置いて聞こえる震えた声




止めたいに違いない。止めたくない訳ない


だってお父さんはとてつもなく私を愛している





〔きっと父さんもお前の立場なら同じことする


……愛する人を救える力があるなら、使っちゃうよな〕


『う"んっ…』



私が涙声で肯定すると〔Aは父さんそっくりだからなぁ〕と懐かしむように続けた





〔お前は死んだ母さんにもそっくりだ。歌が大好きな所とか特に。笑った顔もまるで生き写しのようだった〕


愛する妻にも先立たれ、そして娘にも置いていかれようとする父の心境を思うと胸が苦しくて仕方がなかった





〔お前の母さんはな、人間の密漁船から父さんを庇って亡くなったんだ。まだAが赤ちゃんだった頃だよ〕



そういう所もそっくりだと暗に言われた気がした

実際そうなのだろう





〔A〕


海の底から愛を込めて名前を呼ばれる





〔……いい人に出逢えたんだね〕


自分の命を懸けてでも生きて欲しい人に






『私、アズールに生きて欲しい』

〔うん〕



『きっとアズールは怒るけど、でも私何もしないまま彼を見送るなんてしたくない…！』

〔……そうだね〕




優しく相槌を返される





お父さんだって私を易々と見送りたくなんかないだろうに


それでも責めの言葉一つすら言わず、お父さんは私の背中を押してくれた









『お父さん、最後まで親不孝な娘でごめんね』





〔そんなことない。Aは父さんの自慢の娘だ〕





『私お父さんの子供に生まれられてよかった』





〔Aも、父さんの所に生まれてきてくれてありがとう〕





『……体、大事にしてね』





〔長生きするから、母さんと気長に待ってるといいさ〕





『うん』









こちら陸地。とある病院


海の底ではないけれど、大好きな父に愛を込めて言葉を贈ろう









『お父さん大好き!』







さようなら、元気でね









電話から小さな嗚咽が聞こえた気がした

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